来年1月の台湾総統選に向け、有力候補たちの動きが活発化している。現在は独立志向が強い民進党の蔡英文政権だが、野党国民党が勝利すれば、中国寄りの新政権が誕生する可能性があり、沖縄を取り巻く国際環境も大きく変わる。県民も台湾の政治状況を注視したい。
蔡総統は昨年の統一地方選で惨敗し、再選に黄信号がともった。しかし、中国の習近平国家主席が今年の新年の演説で、台湾に「一国二制度」受け入れを迫り、台湾独立の動きには武力行使も放棄しないと言明。そのため有権者の対中警戒感が高まり、蔡氏の支持率は上昇傾向に転じた。
ただ蔡氏に対する不満は党内でも高まっており、頼清徳(らい・せいとく)前行政院長(首相)が総統選出馬の意向を表明。党内予備選に向けた世論調査をどのように行うかを巡っても、党内での対立を抱えている。
蔡政権の不人気を受け、国民党が勝利する可能性が高まっているとされるが、国民党も候補者を絞り切れていない。一番人気は親中派の高雄市長、韓国瑜(かん・こくゆ)氏で、3月に訪中した際にはトップセールスで農水産物の売り込みを成功させた。国民党は韓氏なら当選の可能性が高いと見たのか、党内予備選の規定を変更してまで、韓氏が出馬しやすい環境を整えた。
ほかに知名度が高い郭台銘(かく・たいめい)鴻海(ホンハイ)精密工業会長(68)が参戦し、台風の目となっている。柯文哲(か・ぶんてつ)台北市長も出馬が取り沙汰される。
中国メディアは蔡政権を厳しく批判する一方、ライバルの中で特に韓氏の動きを好意的に報道しており、中国政府が「韓政権」の誕生を待望しているのは間違いないようだ。