前防衛大臣の小野寺五典衆院議員が25日、石垣市を訪れ、市内ホテルであった自由民主党石垣市支部の政経パーティーで講話し、「防衛大綱の見直し」と「南西諸島の防衛力強化」の意義を強調した。同日午後には、沖縄戦の陸軍特攻第一号・伊舎堂用久中佐と隊員らの顕彰碑と八重山戦争マラリア犠牲者慰霊の碑を参拝し、陸上自衛隊配備予定地も視察。「カンムリワシの巣ができるかもしれないという問題には約1カ月工事を止め、影響が出ないのか専門家に見てもらい工事を再開した」と述べた。
講話では昨年行った防衛大綱見直しの背景として、2014年のロシアによるウクライナ侵攻を挙げて「戦い方が変わった」とし、ロシアのクリミア半島武力占領に関する米国陸軍マクマスター中将の分析を紹介。
▽ロシアの軍人が偽の身分証を使って最初にウクライナ入りし、デモや反対運動をした▽サイバー攻撃で携帯電話の基地局を乗っ取って通信と電力施設を遮断し、偽のSNS情報を流した▽妨害電波で衛星からの情報を遮断し、砲弾を爆発させる電子伸管を不能にして不発弾化させた―などの分析を示した。
「日米ともに徹底的に足りないのは、『宇宙・サイバー・電磁波』。この領域での戦いを防護する、逆に言えば、この戦い方でこちらから攻撃を仕掛ける。これがなけいと国が守れない。これに備え昨年、防衛方針を決めた」と明かし、「それらを用いた『ハイブリッド戦』の高い能力を、中国は持っている」と警鐘を鳴らした。
さらに先月行われた日米安全保障協議委員会(日米「2+2」)で、「日本がサイバー攻撃され、ミサイルが撃ち込まれたと同等の被害が想定された場合、日米が協力して反撃すると確認した」と伝え、「これが抑止力」と強調した。
防衛力の強化の背景として、13年1月に海上自衛隊のヘリコプターと護衛艦に対し中国軍艦が行った攻撃用レーダー照射事件を挙げ、「証拠を突き付けて抗議した。中国側は否定していたが、最後には艦長が更迭された」と中国側が事実上、非を認めたとことを指摘。
そのうえで「尖閣諸島魚釣島は石垣市登野城。今、日中の直接的な緊張感があるのは石垣市をめぐるもの」と述べ、「奄美から与那国間に陸上自衛隊の部隊があったのは沖縄本島のみ。南西部にいざという時の抑止力を備えようと考えた」と明かした。