そんな土壌があって、台湾の立法院(国会に相当)は5月17日、同性婚を合法化する法案を与党の民進党議員と国民党議員の一部が支持し、賛成66、反対27の賛成多数で可決した。アジアで初めてという画期的な出来事だ。
だが、同性婚に対する反対の声は強い。特に台湾基督教教会連盟や保守層が積極的に反対活動を展開。多くのキリスト教徒が反対派の集会に参加し、布教活動とともに宣伝活動を行っている。伝統的にキリスト教の教義では同性婚は認められないというわけだ。同性愛については大目に見ても、それが結婚となると、話は別である。同法案審議が大詰めを迎えた同8日には、立法院近くで反対派市民約千人が集まり、気勢を上げた。
反対を表明しているのは台湾市民ばかりではない。中国共産党系の環球時報(電子版)は同17日、民進党が台湾独立を宣伝するためであると非難した。そこには同性同士の婚姻の自由を求める運動が、体制変革の動きにすり替わるのではないかという危惧があるようだ。また同30日付の弊紙コラム「台湾通信」で迫田勝敏氏が書いているように、来年1月の総統選挙で反対派は同性婚を推し進めた民進党や、国民党の一部の賛成議員の当選を阻止する運動を働き掛けることも予想されている。
一方、同法が施行された5月24日には、台湾で同性カップル526組が誕生した。日本同様晩婚化や未婚化が進んでいる台湾のブライダル業界にとっては、大きなビジネスチャンス。同性婚の結婚式需要が拡大すると期待している。実はLGBTビジネスの全世界での市場規模は約100兆円を超えるといわれる。最も多い米国では77兆円、日本でも約6兆円というから、台湾でも熱い視線が注がれている。
今回のアジア初めての試みは、プラスに働くのか、それともマイナスの方向性に向かうのか目が離せない。 (小貫登)