【国境を撮る⑧】したたかロシアに対応苦慮 中韓も領土交渉注視

択捉島・沙那(ロシア名・クリリスク)の市街地の彼方、薄紫色に染まった散布(チリップ)山を遙かに望む=2004年

 〈北方領土問題は一筋縄ではいかない。加えて中国や韓国が日本の動静を注視している〉
 今、ロシアは択捉(えとろふ)や国後で出された膨大なゴミを処理するため、色丹島で大々的なごみ焼却炉を作ろうとしている。仮にそれができたら、色丹も還す気がないということだ。あるいは色丹が還ってきても、ロシアは色丹で整備したインフラへの対価を要求してくるだろうし、その場合にはどれだけ吹っかけられるか分からない。その費用を払う価値があるのか。
 さらに北方領土では海外企業の誘致も積極的で、北朝鮮、中国、スウェーデンなどの企業が入ってきている。返還の際、彼らとの交渉にかかる費用は日本側が負担することになる。まともな国ならいいが、下手な相手となると、どんな難題を突きつけてくるか想像に難くない。ロシアはそのことまで見越して誘致を進めているはずだ。

 南択捉までが還ってきても、国境防衛のため北択捉との境に米軍基地を置くとしたならば、ロシアはどう思うか。安倍晋三首相は米軍基地を造らないと言っているが、国防を考えた場合、それで大丈夫なのか。あるいは自衛隊を置くのか、そもそも置けるのか。問題山積だ。
 日本は良いカモにされかねない。国益に反する。北方領土問題はこのような兼ね合いがものすごく難しい。
 今後の動静を鵜(う)の目鷹(たか)の目で見ているのが、竹島を不法占拠している韓国と、尖閣諸島海域に不法侵入している中国だ。僕らは常に、日本の周りには北朝鮮、中国、ロシアなど、政治体制の異なる国家が存在するということ自覚しなければならない。

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