県立八重山病院に隣接するヘリポートが石垣市の新庁舎建設工事などで使用困難になる問題で、新たなヘリポートの位置を巡り、市と市議会の意見の相違が鮮明になっている。中山義隆市長は現在地周辺の再開発を理由に、発着場を新石垣空港に変更する方針。これに対し市議会は17日の最終本会議で、離島からの急患輸送で時間的ロスを防ぐため、現在地周辺をヘリポートの設置場所とするよう求める要請決議を可決する見通しだ。
「急患輸送は一分一秒を争う。当局の答弁は残念だ」
13日の市議会一般質問で砥板芳行氏は、与党でありながら、ヘリの新たな発着場を新空港とする市の方針を批判した。
現在地周辺にヘリポートの設置を求める要請決議は野党の長浜信夫氏が提案。13日の議会運営委員会では与党も含め異論は出ず、最終本会議で可決される可能性が高い。
ヘリポートは市消防本部の敷地内にあり、石垣航空基地が離島から急患輸送する際に使われる。現在の八重山病院までの距離なら、患者を数分で引き継げる。
しかし隣接地で市の新庁舎建設が始まり、クレーンなどが投入されると、ヘリの安全な発着に支障が出る恐れがある。
市当局は一般質問で、現ヘリポートが使用困難になった場合「天候に左右されず、安全で安定的に着陸できる場所として新空港が望ましい」(大浜安久消防長)と新空港での発着を明言。新空港を出発した救急車が八重山病院に到着するまで約15分を要すると見られ、竹富町民から懸念の声が上がっている。ただ、県内では那覇市、宮古島市もヘリポートから病院までの輸送時間が10分以上を要するという。
現在地周辺では市の新庁舎建設のほか、区画整理事業の導入による再開発が予定される。市議会一般質問で中山市長は、ヘリポートがあると周辺の建物の高さが制限されることを挙げ「バランスが取れたまちづくりに規制がかかる」と指摘。「(現在地から)5~10分圏内で移動できる範囲には、適切な場所が見つからなかった」とも報告した。
一方で市議会の意見を受け、今後、ヘリポートをどのような形で設置するかは「県も含めて協議したい」と含みを持たせた。
野党からは「『ヘリポートありき』のまちづくりをお願いしたい。病院に近い所を模索してほしい」(井上美智子氏)などと市に発想の転換を求める声が続出。新たなヘリポートの位置は市政の争点の一つに浮上している。