中国の建国70周年を祝う安倍晋三首相のメッセージが、このほど中国国営テレビのニュース番組で放送された。日本以外の世界各国の首脳のメッセージも流されたが、その中には共産党統治を礼賛する内容も含まれ、安倍首相もこうした応援団の一人という扱いだ◆首相メッセージは日中が協力して世界に貢献する重要性を強調した内容だが、共産党統治を正当化する国内向けプロパガンダとして、中国側にうまく利用されている感は否めない◆尖閣諸島国有化当時の最悪の日中関係に比べれば、現在は劇的な関係改善と言えるが、友好ムードの陰には、両国の危ういバランスもかいま見える◆政府は「日中関係は正常な軌道に戻った」と強調するが、尖閣周辺で中国公船が領海侵入を繰り返す現状に変わりはなく、中国側から目に見える譲歩を引き出せた気配はない。習近平国家主席と良好な関係を築いた安倍政権の間は平穏な状況が続くとしても「ポスト安倍」時代にはどうなるのか、八重山住民としては一抹の不安をぬぐえない◆現在の中国は日本に対し、経済力でも軍事力でも圧倒的に優位に立った。日中関係の「正常な軌道」が、中国が主導権を握る力関係を固定化するだけであれば、尖閣を抱える八重山の将来に禍根を残しかねない。