【視点】住民投票の可否、司法で決着へ

 第1回口頭弁論で意見陳述した金城代表は「今回の請求が市の判断で消滅させられると、行政の意見にそぐわない意見は排除できる社会を許すことになる」と訴えた。金城代表らが勝訴すれば、市に住民投票実施の義務が生じる。
 市側は欠席したが、答弁書では「市長自らが規則を制定して住民投票を実施すべきであるとの原告らの主張は、自治基本条例の解釈や、議会と行政との棲み分けを図った地方自治法の趣旨をも逸脱するもの」と反論した。
 市が陸自配備を認め、防衛省が取得した民有地で用地造成工事が進む中、配備反対派は最後の抵抗の手段として住民投票の実施を求めている。原告が勝訴し、住民投票で配備反対が多数を占めた場合、配備を認めた中山義隆市長は政治的責任を問われることになり、苦しい市政運営に追い込まれる可能性が高い。その意味では一定の政治的影響力を持つ裁判である。
 原告が訴える通り、有権者の4分の1以上の署名があれば、市や議会が反対しても住民投票が実施可能と解釈すると、一つ懸念が生じる。住民投票実施の可否に関しては、有権者の4分の1の意思が、民意で選ばれた市や議会の判断を超越することになる。
 住民投票の実施に議会の判断を介在させないことは、慎重な論議を不可能にし、市政が安易なポピュリズム(大衆迎合主義)に堕する危険を招くのではないか。
 住民投票を求める運動の余波で、議会では根拠条例である自治基本条例そのものを検証しようとする動きが始まっている。民間が主催し、同条例を批判する講演会も開催された。議会の論議の行方も注視したい。

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