【視点】バランス外交に危うさも

 米議会で圧倒的な支持を得て可決された香港人権法にトランプ大統領が署名し、同法が成立した。自由と民主主義の騎手として、人権を弾圧する中国への対決姿勢を鮮明にしたことになる。中国との関係改善を進める日本だが、対中融和姿勢が過ぎれば、米国との板挟みになる可能性もある。
 中国政府は声明で「誰も中華民族の偉大な復興を止めることはできない」などと居丈高に反発した。そもそも、香港で問われているのが自由や民主主義の問題とは認識していないのだ。中国メディアは、中国の発展に危機感を抱いた米国が、香港を口実に「中国封じ込め」に躍起になっているとの見方を示している。
 香港では星条旗がはためき「ありがとう米国」と記されたプラカードが掲げられた。米国が依然、民主主義の実現を願う世界の人々の希望の星であることが分かる。その米国が、中国と妥協することは自ら「世界のリーダー」の地位を降りるに等しい。
 日本メディアではトランプ大統領が香港人権法に署名した理由を「弾劾を巡って対立する議会に気兼ねしたのではないか」との論調も多い。だが米国の伝統的価値観から見れば、署名を拒否する選択肢は最初からなかっただろう。

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