県が尖閣諸島(石垣市登野城尖閣)の自然環境調査の実施を国に要請していないことが分かった。中国公船の尖閣沖への侵入、航行が過去最多を更新する中、日本の実効支配を根拠づける環境調査に消極的と受け取られ、石垣市の中山義隆市長は失望感を表している。
動植物などの自然環境調査を行うようこれまで国に求めたことがあるのかどうかについて、県は「記憶にない」(自然保護課)と要請実績のないことを実質的に認めている。
県は尖閣諸島の領有権の明確化、尖閣沖での中国公船による日本漁船追い回しの禁止に限れば、国に毅然とした態度で臨むよう要請活動をしている。
環境調査は上陸を伴い、実効支配の実績づくりの有効打の一つで石垣市と市議会は領有権の明確化、漁船追尾への抗議と併せ、国への要請活動を重ねている。
中山市長は10月27日に市内であった尖閣諸島の実効支配を巡る勉強会で「市は尖閣への上陸やさまざまな調査の実施を(国に)何度も要請しているが、県はそういった要請はできていない」と述べ、不満を示した。
県自然保護課は「市長の発言を確認したが、環境調査に関する県への不満とは確かめられなかった。尖閣問題はさまざまな事柄が入り組み、一つの課としてコメントするのは難しい」と話している。
尖閣諸島は絶滅危惧種のアホウドリの生息地として知られ、野生のヤギが草を食べ尽くす被害も報告されている。小泉進次郎環境相は10月15日、陳情で上京した市議団に対し、人工衛星からの画像撮影による環境調査を11月から取り組む考えを伝えた。
中国船の尖閣沖の領海侵入、接続水域航行は5日現在、年間286日でこれまで最も多かった昨年の282日を既に上回り、常駐の定着化を図っている。