世界ろう者野球大会出場へ 石垣島から唯一の日本代表 宮本大喜さん

日本代表に選ばれ、台湾で開催される世界ろう者野球大会への出場が決まった宮本さん=7月18日午後、市内公園

 石垣市平得に住む宮本大喜さん(25)が、来年3月に台湾で開催される世界ろう者野球大会に、石垣島から唯一の日本代表選手として出場する。取材に応じた宮本さんは、大会への意気込みと支えてくれる指導者や環境への感謝を語った。
 一般社団法人ろう野球協会(野呂義光代表理事)が7月に北海道で開催した、代表選考を兼ねた合宿で日本代表に選ばれた。25人のうち7月時点で19人が確定しており、沖縄では石垣島から唯一宮本さんが、本島からもうひとりが出場する。
 新型コロナウイルスの影響で県外での合宿や練習への参加が限られる日々。現在は友人とキャッチボールやノックをしたり、バッティングセンターで練習に励む毎日だという。
 宮本さんは石垣島と同じように目の前に海を望む福井県・越前町出身。生まれつき難聴があった。コミュニケーションは手話や筆談、相手の口の動きを見て会話する読話(どくわ)を用いる。
 こんがりと焼けた肌の理由は練習の成果だけでなく、マリンアクティビティを提供する市内の店舗で接客業に携わっているから。
 175㌢の長身。公園でキャッチボールをするだけでも、その長い左腕から放たれる力強いボールに、公園にいる子どもたちは目を奪われていた。ポジションはファーストとセンターだという。
 野球を始めたのは小学校4年生。耳が聞こえないという世界でも、周囲は手話などのさまざまな手段を通してスポーツができる環境を整えてくれた。
 指導者による厳しいトレーニングは宮本さんのメンタルを鍛えた。今でも感謝の気持ちを常に持っているという。
 「観察力が優れていると言われるが、それも指導してくれた顧問のおかげ。耳が聞こえないからやらない、できないという考え方は誰にも持ってほしくない」と話す。
 宮本さんが初めて石垣島を訪れたのは2016年の夏。生まれ故郷では見ることのなかったマンタの姿に衝撃を受けた。「ダイビングライセンスを取得して、もっといろんな世界の海を見たい」。そう決意し昨年7月、経験を積むために島に移住した。
 3月の世界大会に向けては「金メダルを目指したい。島でも練習相手がほしいので、硬式野球をやっている人はぜひキャッチボールでも」と照れ臭そうに笑った。
 同協会は、聴覚に障害がある人への野球の普及を目的に昨年1月に設立された。4年に1度、世界規模で行われる聴覚障害者のための総合スポーツ競技大会「デフリンピック」の種目登録を目指している。
 宮本さんは「オリンピックやパラリンピックは有名だが、デフリンピックはまだ知名度が低い。新聞を通して多くの人に知ってもらえたらうれしい」と呼びかけた。

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