尖閣海域「高い生物生産性」 調査報告、好漁場形成に期待 石垣市

「望星丸」の調査時、尖閣諸島・魚釣島周辺を航行する海保の巡視船と中国海警局船(奥)=1月31日(石垣市提供)

 石垣市は、今年1月31日から2日間、石垣島周辺海域で実施した実態調査の報告書をホームページで公表した。尖閣諸島・魚釣島周辺海域と石垣島北西海域の高い生物生産性と多様な生態系について「サンゴ礁内と同レベル、あるいは深層を含めると一層高い生物生産性を有している可能性」があると指摘。好漁場の形成に期待感を示した。

 尖閣諸島周辺の漁獲量に関して現存する最新のデータは、1976年1616㌧、77年に2590㌧となっており、18年の八重山漁協の魚類生産量1069㌧を上回る。「大きな漁業生産海域であることは確か」(報告書)とされるが、現在は中国海警局船が周辺にほぼ常駐し、出漁する日本漁船への威嚇を繰り返しており、漁場としての活用はほとんど進んでいない。
 市は実態調査に東海大の調査船「望星丸」を使用。1月30日に名蔵湾周辺、31日に尖閣諸島周辺で海水の採取などを行った。
 報告書では尖閣周辺海域について、海底付近にある高濃度の栄養塩類が海面に湧き昇る流れが発生しやすく、表層から深層に至るまで「高い生物生産が行われている可能性が推測される」とした。
 今後は黒潮、栄養塩類、プランクトンなどや分布する魚類などの調査研究が必要と提言。漁獲管理などを行う資源管理型漁業を前提に、漁業者に観測ブイや衛星データなどの情報を提供し「漁獲量、生産額の両面で効率的な漁業を形成していくことが可能」と指摘した。
 魚釣島などを漁業基地や避難場所として活用することも想定した。
 魚釣島の状況に関しては船上からの観察・写真撮影のみだったが、ヤギによる食害が島全体に広がっている可能性を懸念。上陸しての調査やドローンを活用した調査などを通じ、現状の把握と適切な対策を行うことが喫緊の課題とした。
 尖閣周辺から石垣島までの海域でブイや発泡スチロールなどの漂流が確認されており、漂着ごみによる海洋生態系への影響に関しても「国際的な枠組みや政府との連携に基づいた対策の検討」を求めた。
 今回の調査について、水分・塩分構造、水質のデータを取得し、高い生産海域であることを改めて確認した意義は極めて大きいと強調した。
 調査は市が策定した海洋基本計画に基づき、石垣市周辺海域の資源管理・活用などを目的に実施。財源にはふるさと納税を活用した。
 「望星丸」には中山義隆市長や市職員も乗船し、尖閣諸島を海上から視察した。中国海警局船が領海侵入し「望星丸」を追尾したが、警護に当たった海上保安庁の巡視船が中国船を寄せつけなかった。
 市議会9月定例会では2回目の調査の予算が可決されており、市は年内の実施を目指す。

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