沖縄県が2025年度一般会計当初予算案に米国ワシントン駐在事務所の活動事業費約3900万円を計上したことを巡り、県議会(中川京貴議長)の野党・自民党は12日の本会議で、予算案は「違法を前提」にしていると指摘して県に差し戻す動議を提出し、賛成多数で可決された。県によると、県議会が予算案を提案前に審議拒否したのは初めて。玉城デニー知事は報道陣に対し「県民にとって重要な予算」と述べ、今後の対応を慎重に検討する考えを示した。
県議会は野党が多数を占めているため、野党が予算審議を拒否した場合は予算を議決できない異例の事態になる。県は今後、予算の修正に応じるか、玉城知事の専決処分で予算を成立させるか検討すると見られる。
動議は大浜一郎県議が提案。県が2015年に駐在事務所を庁内の意思決定がなく、議会の議決も得ないまま株式会社として設立したと批判し「本来的には設立無効」とした。
違法状態が是正されていない法人の存在を前提とした予算は審議できないとして、玉城知事の提案理由説明は「本来的には聞くに値しない」と切り捨てた。
県はこの日、駐在事務所の9年分の経営状況報告書を県議会に提出した。
地方自治法では、地方公共団体は出資法人の経営状況を県議会に報告する義務があるが、県はこれまで怠っていた。動議では、駐在事務所の運営経費を巡り、報告書にも虚偽記載があるとした。
玉城知事は本会議の閉会後、報道陣に対し、地方自治法を引き合いに「予算の調整と提案の権限は知事に専属し、議会は予算を修正できるが、提案権の侵害に当たるような修正はできない」と説明。野党に対し「真摯に対応し、議論を尽くすべきだ」と求めた。
駐在事務所の活動事業費計上を理由に野党が予算全体の審議を拒否していることについて「(予算を)人質に取るような形」と疑問視。「引き続き丁寧に説明する。このような状態が長引かないように願う」と強調した。
自民党の座波一県議は報道陣に対し「有り得ない予算計上。議会構成も与党少数となったので、執行部がしっかり現実を認識し、議会に臨むのが筋だ」と述べた。
県議会2月定例会の開会に先立ち、自民党は県に対し、当初予算案から駐在事務所の活動事業費を削除し、予備費に組み入れるよう要求。株式会社への出資の追認を求める議案の提出も必要とした。県当局と与党はいずれも拒否し、午前10時に予定されていた本会議の開会は午後2時過ぎにずれ込んだ。
開会後、県は駐在事務所の活動事業費を盛り込んだ一般会計当初予算案約8894億円を予定通り上程。玉城知事が県政運営方針演説を行った。