8月17日投開票の石垣市長選で、前市議の砥板芳行氏(55)の陣営が、5選を目指す前職、中山義隆氏(58)に対抗し「変えよう長期政権」というキャッチフレーズを使用し始めた。2010年の市長選で初当選した中山氏が当時、打ち出したキャッチフレーズを「逆使用」。多選の是非を最大争点化する構えだ。市議、箕底用一氏(44)も中山氏の「長期政権」を批判している。
砥板陣営の後援会事務所前では「市民ファースト」「変えよう長期政権」という二つのキャッチフレーズを記したのぼりがはためく。27日の事務所びらきでは、参院選に初当選したばかりの高良沙哉氏も駆けつけ「論点は腐敗した長期政権」と強調した。
石垣市の市長は過去に2人が4選されているが、5選を果たした市長はいない。
中山氏は2010年の市長選で、当時62歳で5選を目指した大浜長照氏に挑戦。「変えよう長期政権」と記したポスターを各地の目抜き通りに掲示し、大浜氏の多選を攻撃した。当時42歳だった中山氏の清新なイメージもあいまって、選挙戦に大きなインパクトを与えた経緯がある。
砥板陣営は、15年前の中山氏とほぼ同じポスターを作成し、事務所前などに貼り出し始めた。陣営関係者は「中山氏へのブーメランだ」と、キャッチフレーズを意識的に使用していることを認めた。5選に挑む中山氏に対し、今回は逆方向の「風」を巻き起こす狙いだ。
箕底氏も、中山氏の失職のきっかけとなった公文書の日付改ざんについて「長期政権のおごりと行政劣化の象徴的な事件」と多選を糾弾している。
当の中山氏は17日の記者会見で「私が前市政の長期政権を批判して戦った時は行政の組織が硬直化し、経済が疲弊して将来に希望が見えなかった。私がやった4期が前回と同じかどうか、ぜひ市民に見ていただきたい」と多選批判に反論した。
中山陣営の運動員の一人は「中山氏が高齢であれば『もういいのでは』と言えるが、本人はまだ若い。今、一番あぶらがのっている三枚肉だ」と中山氏の続投に期待した。
多選の問題で注目されるのは公明党の動向だ。15年前の市長選で、公明党市議団は「長期政権は腐敗する」と言い切り、大浜氏不支持と中山氏支持を決めた経緯があるためだ。
ただ沖縄の政治状況は当時と異なり、現在「自公」対「オール沖縄」勢力の対立軸が定着。「オール沖縄」勢力と支持層が重なる砥板氏を公明党が支持したり、自由投票を選択する可能性は低いと見られる。箕底氏に対しても、現時点で公明党から接触を図る動きは見られない。
中山陣営は自民党県連に推薦願いを提出している。陣営関係者は、自民党県連が中山氏を推薦すれば、従来通りの自公選挙協力体制が構築されると予想した。