▽「排外主義的」
「今のように多くの人が生活に不満を抱えているような状況だと、弱い立場の人に対する冷たい視線が生まれやすい状況ではないか。それを背景に躍進したのだと思っている」
当選から一夜明けた21日、「オール沖縄」勢力が推した高良沙哉(46)は、沖縄でも大きく得票を伸ばした参政党に対し、警戒感をあらわにした。
選挙戦で高良は、主に消費減税など県民の暮らし支援、米軍基地問題などを訴えてきた。しかし最終盤、報道各社の世論調査で全国的な参政党の支持伸長が明らかになると、高良氏も街頭演説などで参政党の「日本人ファースト」の主張を批判的に取り上げるようになる。
沖縄大教授として、憲法の人権問題に取り組んできた高良にとって、参政党の訴えは「排外主義的な動き」と映る。
当選後、参政党の躍進について、改めて見解を問われた高良。「参政党のほかにも、差別的な発言をする政治家もいると思う。そういった勢力を支持する人たちにも『結果として自分たちを排除する要素につながっていく』と伝えないといけない」と深刻視した。
一方、参政党の和田知久は高良に対し「(高良氏は消費減税を掲げているが)推薦する立憲民主党は増税路線だから、公約に無理があった」「自公、オール沖縄、僕からすると、どっちを選んでも何も変わらない」と対決姿勢を示す。
▽「自民は保守もどき」
ただ参政党の躍進で、「漁夫の利」を得たのは結果的に高良だった。
高良が今選挙で獲得したのは約26万5千票で、前回2022年参院選で「オール沖縄」の伊波洋一が獲得した約27万4千票から減少。選対本部長の玉城デニー知事は高良氏の総決起大会で「当選には30万票必要」と訴えたが、大きく届かない結果になった。
それでも勝利したのは、自民党の奥間亮と和田が保守票を食い合う中、高良がコアな革新層を固め切ったからだ。
高良の得票数だけ見れば「オール沖縄」勢力の退潮傾向に歯止めが掛かったとは言い難い。仮に参政党が候補を擁立せず、自公と「オール沖縄」勢力の一騎打ちだった場合、勝敗の行方は混とんとした可能性が高い。
参政党は全国32の一人区すべてに候補者を立てた。八重山日報のインタビューに応じた神谷宗幣代表は、保守票が自民党と参政党に割れ、野党を利する可能性を問われ「自民はもはや保守ではない。私たちが保守を分断しているのではなく、保守もどきのことをやっているのが自民だ」と述べた。
▽知事選
参院選を終え、県内では来年の知事選に照準を合わせた動きが本格化する。革新陣営では「オール沖縄」勢力結集の原点となった米軍普天間飛行場の辺野古移設反対を改めてクローズアップする動きが見られる。
玉城知事は20日夜「辺野古移設反対の民意はぶれていない」と強調。今後、辺野古沿岸の軟弱地盤改良工事で国が新たな設計変更承認申請を出した場合「厳正に審査する。問題があれば工事を中止させる」と言明した。
選挙戦で辺野古移設は主要争点から外れたが、高良は街頭演説などであえて「辺野古」への言及を続けた。20日の当選インタビューでも「国際社会を味方につけて基地建設を止めていく」と移設阻止の努力を続ける考えを示した。
参政党の動きにも、早くも関心が集まる。和田は20日夜、報道陣に知事選への対応を問われ「参政党は、首長選には(候補者を)出さないと聞いている。神谷代表が決める」とかわした。
(敬称略、仲新城誠)(終わり)