【視点】深刻化する一方の人手不足

 人手不足が叫ばれて久しい。数字の上でも裏付けるように、沖縄の新規求人倍率は10月、復帰後初めて2倍を超え、2・06倍となった。有効求人倍率も全国平均よりは低いものの、2016年10月以降、毎月1倍以上をキープする状況が続いている。
 日本商工会議所は「この1年の中小企業の悩みは人手不足だった」として、今年の漢字に「人」を選んだ。少数精鋭の人材で業績向上を図らなくてはならない中小企業にとって、人手不足は文字通り致命的である。
 2017年の出生数は、過去最少の94万1千人と見られ、2年続けて100万人を割り込む見通しになった。子どもの数が年々少なくなり、日本の人口そのものが縮小傾向にある中で、働き手の数も減りつつある。しかしより切実な問題は、人材の質だ。
 働きたい人は大勢いるし、企業の採用意欲も高いが、真に必要とされる人材は少ない。いくら働き手の数を増やしても、それが企業の求める能力を備える人材でなければ、業績向上は図れない。沖縄に限らず、全国の中小企業が抱える根本的な問題は、単に人材の確保なのではなく「優秀な人材の確保」なのである。
 労働市場は数字だけ見れば売り手市場で、一見、空前の好景気に沸いているように見える。しかし数字とは裏腹に、実際には多くの中小企業が人材の問題で苦境に陥っており、とても好景気を実感できる状況にはない。
 要因の一つには、多くの優秀な人材が首都圏に流出してしまう現状がある。賃金や職場環境で厚待遇を提供する本土企業に対し、沖縄の中小企業は太刀打ちできない。待遇の良さだけではない「夢」を掲げられる、魅力ある企業づくりが必要だ。
 そもそも沖縄は他府県に比べ、人材育成が遅れているという指摘もある。それが端的に表れているのは学力低迷の問題だ。小中学生が毎年、全国学力テストで下位に甘んじている現状を打開しなければ、沖縄の未来は開けない。改めて教育の重要性を見直す必要がある。
 沖縄に残った少数の人材を県内で奪い合えば、必然的に大企業に人材が集中し、中小企業は恒常的な人手不足にあえぐことになる。企業相互で、求められる分野の人材を派遣する提携関係の構築はできないだろうか。
 沖縄振興開発金融公庫は11月、「拡大する沖縄経済の下で深刻化する人手不足」と題するレポートを公表し、人手不足への対応策として①機械化やICT(情報通信技術)の導入②限られた人材の能力を最大限に発揮させる企業経営③人材の定着に向けた工夫―などを提言した。
 時代の最先端に高い関心を抱きつつ、従業員のモチベーションを高め、能力を最大限に発揮できる職場環境づくりが経営者に求められている。

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