県が新型コロナウイルスのPCR検査対象を絞り込む方針を示したことを巡り、八重山地域新型コロナウイルス対策本部は8日、八重山では濃厚接触者を全員検査する従来の態勢を維持する方針を確認した。中山義隆市長が全員検査の継続を求めるなど、地元関係者から県の方針変更に懸念の声が上がっていた。
沖縄本島では市中感染が拡大し、検査数の急増で検査機関の能力が限界に近づいている。このため、県は専門家会議の意見を受け、医療・検査方針の軸足を感染拡大防止から重症者対応に移した。
7日には当面、濃厚接触者のPCR検査を、①有症状者②65歳以上③基礎疾患がある人④医療・介護従事者―のみに限定する新基準を示した。
一方、離島の八重山地区では市中感染の拡大は見られず、クラスター(感染者集団)関連の感染経路もほぼ把握できている。濃厚接触者を早期に特定し、無症状者を含め全員検査することで感染拡大を防ぐ戦略で、県の新基準とは真っ向から対立する。
中山市長は8日、県八重山合同庁舎で開かれた対策本部の会合前に取材に応じ「(新基準を)県が八重山に適用すれば、逆に感染が拡大することになりかねない。石垣市では(濃厚接触者を全員検査する)現在の検査体制を維持してもらいたい」と話した。対策本部では県側に対し、現在の態勢の維持を申し入れた。
会合には県八重山事務所や八重山保健所も出席しており、県の新基準は八重山では適用しない方針を確認した。
竹富町も西表島の集団感染を受け、濃厚接触者の全員検査を進めている。西大舛高旬町長によると、町が開設した相談窓口の相談件数は8日だけで80件を超える可能性があり、町長は「離島は県の方針のようにはいかない。希望する人全員に検査を受けさせるべきだ」と求めた。
石垣市は県立八重山病院にもPCR検査機器を設置しており、地元独自の検査は可能。ただ八重山でも感染が拡大し、同病院のPCR検査能力が逼迫(ひっぱく)しているため、無症状者の検体については、従来通り沖縄本島の検査機関に検査を依頼している。
県の新基準が八重山にも適用されれば、この対応も認められなくなる可能性がある。