新型コロナウイルスの急拡大を受け、県は感染者の濃厚接触者全員にPCR検査を実施していた従来の対応を見直し、検査対象を重症化リスクが高い人優先に絞り込む方針に転換した。ただ離島の八重山では現在、濃厚接触者を全員検査することで市中感染を食い止めている。感染レベルが異なる本島の対応を一律に離島に適用すれば、かえって感染拡大を助長し、逆効果となる恐れがある。
県によると、県内のPCR検査実施人数は7月20日の3655人から8月2日には8972人へと2・45倍増加した。全国平均の1・32倍を大きく上回るペースで検査数が急増している。
PCR検査に関する県の新基準は、検査件数を減らし、医療・検査機関の能力を重症化リスクが高い人への対応に重点配分するための措置。
専門家会議の委員でもある高山義浩医師(県立中部病院)は7日の記者会見で「症状が出た段階で検査しても遅くない」と新基準に理解を求めた。
沖縄本島では中南部を中心に感染拡大に歯止めが掛からず、県は警戒レベルを「感染流行期」に引き上げ、県独自の緊急事態宣言を発令した。この段階に至れば、ある程度の感染拡大はやむを得ないという認識もかいま見える。
これに対し、八重山では感染者が増えているとはいえ、感染経路はおおむね特定されている。石垣市、竹富町とも「市中感染は起きていない」として、現時点では4月のような市町独自の緊急事態宣言は否定している。まだ感染拡大は食い止められる段階にあり、検査対象を絞る積極的意義は乏しい。本島と離島では異なる対応が求められている。
八重山地区医師会の上原秀政会長は「無症状の感染者から感染が拡大する可能性がある。県も検査機関がパンク寸前で苦肉の策だと思うが、離島は那覇とは状況が異なり、検査数を増やして感染者を隔離しなくてはならない」と訴える。
検査数増で県が懸念する検査・医療機関の人員不足や機能低下は「国が対応すべき問題」と指摘する。