石垣市役所は今、どうなっているのか。市民の呆れ顔が見えるようだ。
今年に入り、職員による公金着服が立て続けに3件も発覚した。前代未聞の異常事態だ。
市は今月15日、市民保健部の男性職員が首里城再建の義援金など計501万円を着服していたと発表した。県民の関心が高い首里城絡みで、金額が大きいこともあって、全国的なニュースになった。
6月には小学校の臨時事務職員が給食費214万円を着服、7月には建設部職員が駐車場の売り上げ金166万円を着服したことが発覚している。
中山義隆市長は今月15日の記者会見で「今後このようなことが起こらないよう、市民の皆様からの信頼回復に向け、再発防止に全庁を挙げて努める」と謝罪した。
3件の着服は時期的に重なっており、別々の部署で似たような行為が同時進行していたことになる。それぞれの事案の背景を徹底的に調査し、何が問題だったのかを洗い出してもらいたい。
市は現在も研修などを通じて綱紀粛正に努めているようだが、より一層の徹底が求められる。公金のチェック体制もさらに強化してほしい。
公務員はいわゆるエリートではないが、優秀な人材が集まっているのも確かで、市役所職員は市民から尊敬される職業だ。公金を取り扱ったり、許認可に関わったりと、ある種特権的な立場にあるのも間違いない。だが、憲法上はあくまで全体の奉仕者であるという立場を忘れてもらっては困る。市役所職員は「偉い人」だからではなく「市民の役に立つ人」だから尊敬されるのだ。
市民は今、市役所に対し、これらの不祥事は氷山の一角ではないか、あるいは、同様にモラルが崩壊した職員はもっといるのではないかと疑っている。職員の圧倒的多数は真面目な人たちだと思うが、かつてなく厳しい視線が市役所に向けられていることを自覚してほしい。
新型コロナウイルス感染拡大で市民が苦境に陥っている今、身分や給与が保証されている職員の身勝手は、とりわけ激しい怒りにさらされることだろう。対外的なイメージも悪く、市民が長年かけて築き上げてきた「石垣島」ブランドにも泥を塗るものだ。
市役所では最近、公金の着服3件以外に、暴力沙汰や女性宅への住居侵入で2人の職員が逮捕されている。公務外の問題ではあるが、職員にはプライベートでも一般人以上の規律が求められる。これらの問題も、市役所職員のモラル低下を示すものとして深刻に受け止めるべきだ。猛省を促したい。
今回の着服問題を受け、中山市長は、自らと副市長の処分を検討する考えを示した。12月議会で減給処分の条例を提出する方向のようだが、トップとして責任を負うのは当然だ。
就任後10年が経過し「長期政権」と呼ばれるようになって緊張感が薄らいでいるのであれば問題だ。初心に戻り、就任当初掲げた職員の意識改革に改めて取り組んでもらいたい。