【視点】5回目緊急宣言 島の医療守れ

政府は23日から6月20日までの期間、沖縄県を新型コロナウイルスの緊急事態宣言対象地域に追加した。沖縄はこれまでに独自の緊急事態宣言を3回出しており、政府が昨年4月、全国に発令した1回目の緊急事態宣言も含め、実に5回目の緊急事態宣言下に入った。
県内では25日、過去最多となる256人の感染が確認され、直近1週間の人口10万人当たり新規感染者数も全国ワーストと深刻な状況だ。5月の大型連休で人の移動が活発化し、従来株より感染力が強い変異株が一気に流行したことが要因と見られる。
県内の1日当たり新規感染者数は今後、300人台に達する可能性も指摘されるようになった。県の担当者は、現在のペースで感染者数が増え続けると、1週間ほどで医療崩壊に至る可能性があると言明している。
最悪の場合、医療機関が新型コロナ患者で満杯になり、新型コロナ以外も含めた病気やけがの人が必要な治療を受けられなくなる。医療現場で「命の選別」さえ起こりかねないギリギリの状態だ。
県内でもとりわけ感染状況が悪化しているのが石垣市だ。5月の感染者数は25日時点で202人に達した。八重山では累計520人余の感染者が確認されているが、今月の感染者数だけで全体の約4割を占めるという異常なハイペースである。
中核病院である県立八重山病院は既に通常医療の一部制限に踏み切っており、八重山の医療も抜き差しならぬ状況に陥っている。
感染は竹富町の離島にも及び、西表島、小浜島、黒島で患者が発生している。竹富町の島々は離島の離島であるだけに、感染者が急増すれば医療体制が耐えられない。
緊急事態宣言を受け、県は酒類やカラオケ設備を提供する店に休業を要請している。石垣市の中山義隆市長も「ここ1~2週間が重要」と述べ、市民に来島者と接触しないことなどを求めた。
大型連休の「緩み」が現在の感染拡大につながったのだとすれば、今は経済への打撃を覚悟の上で極限まで引き締めを図り、これ以上の感染拡大を食い止めるべき時期だ。
八重山保健所によると、感染経路は半数ほどは追うことができているが、経路不明で市中感染と思われるケースも徐々に増えているという。ここで抑え込まなければ、市中感染が際限なく広がってしまいかねない。
心強いのは、八重山でも高齢者対象のワクチン集団接種が着々と進んでいることだ。副反応を心配する人もいるが、現時点で大きな問題は起きていない。なるべく多くの住民にワクチンを接種してもらうことが医療崩壊の阻止につながる。
ただ「ワクチンを接種したから百%安心」ではなく、重症化を防ぐ抗体が完全にできるまで2回目の接種から10日~14日ほどかかるという。マスク着用や3密回避などの感染予防対策はワクチン接種後も当面は続ける必要がある。
まずは高齢者を守ることが最優先事項だが、若年層も含めたワクチン接種体制も早めに構築してほしい。

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