【視点】離島住民直撃する物価高

 物価高が家計を直撃し始めている。現在、沖縄のレギュラーガソリン価格は長崎県、大分県に次ぐ高い水準となっており、移動コストがかかる離島住民の経済負担が増している。帝国データバンクによると、食品も年内に1万品目超が値上げされる見通しだ。
 八重山住民の航空運賃、船賃は一括交付金で軽減されているが、原油価格の上昇もあって高止まりしている。沖縄のレギュラーガソリン小売価格は先月30日現在、全国平均が168円台なのに対し170円台後半となっている。沖縄本島に比べ、離島では一層値上がりする傾向にある。
 多数の離島で構成される竹富町は、石垣島と各島を結ぶ旅客船が生活航路となっているが、町が実施したアンケートでは「(運賃に原油価格の上昇分を上乗せする)燃料サーチャージを含むと高い」「もう少し安ければありがたい」などと切実な声が寄せられた。
 一括交付金事業による負担軽減効果は65%が肯定的に評価したが、割り引き後の運賃に「満足」と回答したのは42・4%で、「不満」の41・5%とほぼ同じだった。
 沖縄の復帰後50年間、政府の各種振興策で生活レベルは格段に向上したが、島から出入りする際に必要な移動コストに代表される「離島苦」の抜本的な解消には至っていない。むしろ最近の原油価格上昇が離島苦に輪を掛けている状態だ。
 原油価格上昇は、ロシアのウクライナ侵攻を受けた欧州連合(EU)によるロシア産石油の禁輸措置や円高が主な要因だ。
 特に円高は近年にないスピードで進行している。輸出産業には有利とされる半面、生活必需品や日用品の多くを輸入に頼っている日本人の生活は厳しさを増す。
 世界的に半導体不足も深刻化しており、日本でもオーディオ製品などの値上げの動きが出ている。
 日本では長くデフレ基調が続き、日銀は2%の物価上昇を目標に掲げてきた。だが現在の物価上昇は景気拡大や賃金上昇を伴っておらず、物価高と景気後退が同時に進行する「スタグフレーション」という最悪の事態すら危惧される状況になっている。
 沖縄や八重山観光は新型コロナウイルス感染拡大で大打撃を受けたが、ワクチン接種の普及などで感染状況は徐々に落ち着き始めた。夏の観光シーズンに向け、八重山でも徐々に観光客が増え始めており、コロナ禍以来3年ぶりに、島は活況を呈しつつある。
 だがスタグフレーションによる生活不安が到来すれば、観光は真っ先に切り詰められる。観光を主要産業とする八重山にとっては、コロナ禍を脱しつつあると言っても、まだまだ気を抜けない状況が続く。
 経済危機のしわ寄せを最も受けるのは離島住民だ。生活不安の解消に向け、政治の力強いリーダーシップが求められている。

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