【視点】民主主義破壊する卑劣なテロ

 民主主義を破壊する卑劣なテロ事件が起きた。奈良県で参院選の街頭演説中だった安倍晋三元首相が銃撃され、死亡した。首相経験者が殺害される事件は戦後初めてだ。安倍氏は歴代最長政権を率い、国際的にも存在感を示した政治家だっただけに、国内だけでなく世界に衝撃が広がっている。
 奈良市に住む41歳の男が、演説中の安倍氏に背後から近づき発砲した。安倍氏は現場で救命措置を受け、直ちに病院に運ばれたが、数時間後に死亡が発表された。
 この間、日本中の人たちが固唾をのむ思いで安倍氏の回復を願い続けた。離島の八重山も例外ではなく、どこへ行っても市民らが安倍氏を話題にし、容体を心配していた。死亡のニュースが流れると、怒りと悲しみが広がった。
 選挙運動中の政治家の口を暴力で封じる行為は、民主主義に対する正面からの挑戦であり、いくら非難して足りない。言語道断の蛮行だ。容疑者がなぜこのような愚かなことを思いつき、しかも実行に移したのか。事件の背景を徹底的に捜査してほしい。
 銃撃時の映像をニュースで見る限り、容疑者はいとも簡単に安倍氏に接近している。選挙では、政治家はどうしても有権者と触れ合わざるを得ず、選挙と危険と常に隣り合わせとも言える。そうした中でも、何とか安倍氏を守り切ることはできなかったのか。要人警護の体制に抜かりはなかったのか。再発防止に向けた検証が必要だ。
 この事件を契機に政治家と有権者の間に垣根がつくられてしまうと、民主主義にとってもダメージになる。事件が及ぼす悪影響は大きい。
 銃社会と言われる米国では乱射事件が多発し、政治家もたびたび犠牲になっている。だが銃規制が厳しい日本でこのような事件が起きたことは、多くの国民を震撼させた。銃の入手ルートなどを解明し、改めて取り締まり徹底を図る必要があるだろう。
 米国では約60年前に現職のケネディ大統領が白昼銃撃されて死亡した。米国が若い指導者を突然奪われたこの暗殺事件は、現在でも米国の歴史に大きな影を落としている。
 安倍氏は現職の首相ではないが、在任中に大きな実績を残し、退任後も安全保障や外交問題で積極的な発言を続けた。激しい毀誉褒貶にさらされたが、戦後最大の政治家の一人だったと言っていい。この事件が、この国にとって消し難い心の傷になることは間違いない。無念の思いである。
 安倍氏は沖縄との関りも深い。歴代首相の中でも、沖縄振興や米軍基地負担軽減にとりわけ熱心に取り組んだ一人だった。
 八重山との関係では、在任中の施政方針演説でわざわざ石垣島に触れ、港湾など観光インフラの整備に意欲を示したことが記憶に残る。八重山は貴重な応援団の一人を失った。

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