【視点】大接戦の米大統領選

 米大統領選は11月5日の投票まで1週間を切り、日米のメディアは、民主党のハリス副大統領と共和党のトランプ前大統領の大接戦になっていると報じている。
 日本は衆院選で与党が過半数を割り、一気に政情が不安定化した。だが誰が大統領、首相になっても、日本としては日米同盟を基軸に外交・安全保障を進める方向性を堅持すべきだ。同時に、米国に過剰に依存するような体質も改めなくてはならない。
 米大統領選は民主党候補が急きょ、バイデン大統領からハリス氏に交代。初のアジア系女性大統領誕生に対する期待感から、党内は「ハリス旋風」と呼ばれる盛り上がりを見せ、当初は報道各社による世論調査の支持率も軒並みトランプ氏を上回った。
 だが選挙戦終盤になり、ハリス氏の能力不足が露呈したような場面が目立つようになる。
 保守系のFOXニュースに出演した際には「米国が悪い方向に向かっている」と考える有権者が多いとの世論調査について見解を問われた。ところが正面から答えようとせず「トランプが大統領に立候補している」などと、ちぐはぐな言い回しに終始した。
 別のインタビューでは、米国の最大の脅威国を問われ「イラン」と回答。FOXニュースのインタビューで司会者から「専門家は『中国』という答えを予想していた」と突っ込まれた。だがハリス氏は、なぜ最大の脅威国がイランなのか、理由を明確に説明することができなかった。
 さらに選挙集会での演説中、原稿を表示するテレプロンプターが故障するアクシデントに遭遇。ハリス氏は言葉に詰まり「(投票まで)32日」と4回繰り返した。この動画はトランプ陣営によって拡散され、とっさの事態にハリス氏の対処能力に疑問符がついた。
 選挙戦終盤の世論調査では、全米や激戦州の支持率で僅差ながらトランプ氏が上回るようになった。投票直前の段階で、トランプ氏優勢との報道も増え始めている。
 しかし、トランプ氏にも懸念材料は多い。不法移民に対する差別的発言などを槍玉に挙げられ、主要メディアによる批判的な報道にさらされ続けている。
 だが数々の「暴言」にもかかわらず、トランプ氏が大統領選で3回連続して共和党候補に選ばれ、今選挙でも優勢と言われている理由を、私たちはもっと重く受け止めるべきだ。
 既存の政治家がきれいごとを言うだけで、一向に結果を出せない現状に、多くの有権者が飽き飽きしているためではないか。
 いずれにせよ、米国一国だけが世界のリーダーとして圧倒的な存在感を示した時代は去った。トランプ氏、ハリス氏のいずれも、日本にとって頼りがいのある大統領になるとは到底思えない。
 石破茂政権で、米軍の特権的地位を認めた日米地位協定の改定がにわかにクローズアップされている。来年1月の米大統領交代は、日本としてはむしろ強く出るチャンスだと捉えるべきだ。
 沖縄県民の米軍基地負担を軽減することが、結果として日米同盟の強化につながる。日本の首相は、そのことを米大統領に説得できる人物でなくてはならない。

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