【視点】「オール沖縄」単純に勝利と言えず

 参院選沖縄選挙区は玉城デニー知事が支援する現職の伊波洋一氏が自公の古謝玄太氏を破り、再選を果たした。米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に反対する「オール沖縄」勢力は主要選挙での連敗を止め、9月の知事選に弾みをつけた。
 だが、ことはそう単純ではない面もある。伊波氏と古謝氏の票差は約2800票。歴史的とも言える大接戦だ。過去の参院選では「オール沖縄」勢力の候補が自公候補に10万票差をつけたこともあったことを考えると、参院選で「オール沖縄」勢力の衰退傾向が止まったとは言えない。
 玉城デニー知事は11日の記者会見で、参院選の結果に関し「政府は辺野古移設の方針を改めるべき」と述べた。だが最近、県内で行われた主要選挙の結果は、皮肉にも辺野古移設問題に対する県民の関心の薄れ、あるいは辺野古移設を容認する層の増加を示しているように見える。
 昨年の衆院選では、名護市を含む沖縄3区で自公の島尻安伊子氏が「オール沖縄」勢力の候補を破った。辺野古移設の是非が争点の一つとなった主要選挙で自公が勝利するのは初めてで、民意の変化を最も象徴的に感じさせる出来事だった。
 今回の参院選も、伊波、古謝氏の得票を見る限り、改めて辺野古反対の民意が示されたと言うより、古謝氏以外の候補も含め、移設容認候補の得票が伸長を続けているという印象が強い。少なくとも辺野古移設に反対する圧倒的な民意のようなものは、もう存在していないのではないか。
 今回の結果に自民党は落胆しているが、一方で大きな手応えを感じているのも事実だろう。
 県民の辺野古移設に対する受け止めが変わりつつあるのは、沖縄を取り巻く国際情勢の厳しさが一つの要因だ。
 ロシアのウクライナ侵攻で国際秩序が流動化し、中国の台湾侵も現実味を帯びて語られるようになった。抑止力の重要性が再認識される中で「基地反対」一辺倒では県民の生命や財産を守れないことが明確になりつつある。
 「オール沖縄」勢力が掲げる政策の非現実性は明らかだが、それだけでなく、実際問題として移設を阻止する有効策も見当たらない。現地では政府による埋め立て工事が着々と進んでおり「移設は不可能」という基地反対派の主張も説得力を失いつつある。
 こうした状況を考えると、参院選の結果にかかわらず「オール沖縄」勢力にとって、いばらの道が続くことは課確実だ。
 ただ、2014年知事選以来、今回の参院選も含め、全県規模の選挙で「オール沖縄」勢力は依然、不敗神話を誇る。このことが知事選で玉城知事の再選の好材料になることは間違いない。政策とは別に、玉城知事の個人的人気が非常に高いことも選挙戦には有利になる。
 石垣市は保守地盤と言われ、参院選でも古謝氏の得票が伊波氏を上回ったが、両氏の票差は約1000票。40%台に低迷した投票率をどう解釈するかにもよるが、八重山ではむしろ「オール沖縄」勢力の健闘ぶりが目立ったと言っていい。

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