伊豆大島の鳥島東方海域で海上自衛隊のSH60K哨戒ヘリコプター2機が墜落し、1人が死亡、7人が行方不明になる事故が起きた。2023年4月に宮古島周辺海域で陸上自衛隊ヘリが墜落し、10人が死亡した事故はまだ記憶に新しい。わずか1年で自衛隊の重大事故が続発する事態に、衝撃を禁じ得ない。
まずは今回の事故で行方不明になっている搭乗者の生還を祈りたい。同時に、安全保障の要(かなめ)となる自衛隊がこのような状況で「日本の防衛は本当に大丈夫なのか」という不安も募る。
事故当時、海自は潜水艦を探知する訓練をしており、墜落した2機は衝突した可能性があると見られている。機体は主要部分が沈んだままになっていると見られ、海自と海上保安庁が捜索を続けている。
海自は貴重なパイロットと高価な機材を失った。組織がこうむったダメージは、一般人の私たちの想像以上だろう。
中国の軍事力拡大と台湾有事への懸念、ロシアのウクライナ侵攻など、日本を取り巻く国際環境は激変しており、自衛隊へのプレッシャーも戦後かつてないほど強まっている。日々の任務や訓練も過酷化の一途をたどっているはずだ。
昨今の事故は、自衛隊が置かれた厳しい状況の延長線上で発生したと見ることもできる。つまり、日本国民全体で考えるべき問題である。
昨年の陸自ヘリ事故では部隊の幹部や精鋭の隊員を失い、自衛隊は二度とこのような事故は起こさないと決意したはずだ。だが、事故の教訓は生かされなかった。
現時点で機体に異常があった証拠は見つかっていないが、防衛省・自衛隊はこの事態を重く受け止め、組織に何か問題がある可能性も含め、徹底した原因究明を図るべきだ。
自衛隊は八重山でも住民に身近な存在になりつつある。昨年3月の陸自石垣駐屯地開設から1年が経過し、まちなかで迷彩服を着た隊員を見る機会も増えた。
隊員たちは、石垣島まつりパレードの参加、断水に伴う災害派遣、最近では石垣島トライアスロンでのボランティアなど、地域に密着した活動に積極的に取り組んでいる。多くの市民の期待に応えた姿であると評価できる。
24日には災害時の物資輸送を想定し、駐屯地から中央運動公園まで約16㌔を歩く初の訓練が行われる。
住民の中には、ふだん見慣れない迷彩服の隊員に遭遇し「何事が起きたのか」と不安になる人もまだ多い。市民団体や石垣市議会の野党は物資輸送訓練に反対する声明を出した。
八重山は本土や沖縄本島とは異なり、狭い離島という地域性がある。自衛隊が何の目的で何をしているのか、可能な限り住民に事前の広報を行い、不安を払拭する努力が必要だ。
今回の事故は駐屯地には直接関係ないが、隊員が絡む事件・事故の防止に向け、自衛隊という組織としての問題意識は共有できるはずだ。いっそう気を引き締め、住民に信頼される自衛隊であり続けてほしい。