沖縄で10日、祖先の霊を供養する旧盆が始まった。ンカイビー(迎えの日)と呼ばれる旧盆初日、石垣市内では各地で親族一同が集まり、グショー(あの世)から祖先を迎えた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、昨年、一昨年に引き続き、今年も参加人数を減らしたり、集まりを見合わせたりする家庭も多く、今年も静かな旧盆となった。
石垣市石垣の宮良昌招(まさあき)さん(72)宅では、昌招さんの長男・年史之(としゆき)さん(43)一家5人が集まった。コロナ禍により、参加者は例年より少なく、規模も縮小した。
午後6時半ごろ、昌招さんが仏前に座り、八重山方言で「お盆が来ました。一家の健康と子孫繁栄、無病息災を祈願します」と唱え、焼香をあげた。
その後、年史之さん、長女の亜弥羽さん(8)、次女の玖恋亜(くれあ)さん(5)、長男・英道(はなみち)君(4)と妻の亜貴乃さん(41)の順に焼香をあげ、祈りを捧げた。
仏前には、コメ、果物、ジューシーなどが供えられた。儀式が一通り終わると、一同で食事をとりつつ故人の思い出話に花を咲かせた。
昌招さんは「時代とともに儀式も簡素化していくが、最低限、盆と正月だけは続けていくべきだ」と述べ、伝統を紡(つむ)いでいく重要性を強調した。
弟の英道君の面倒を見つつ深々と祈りを捧げた亜弥羽さんは「新しい命をまた創って、この世界に戻るようご先祖様にお祈りした」と話した。
旧盆期間中は例年、石垣島で各地区の青年会による「アンガマ」が行われるが、新型コロナ感染拡大の中、今年も中止や縮小が相次いだ。竹富町波照間島で旧盆中日に行われる伝統行事「ムシャーマ」は3年連続で中止が決まった。