【視点】知事選 問われる国との距離感

 沖縄最大の政治決戦である知事選が25日告示される。現職で再選を目指す玉城デニー氏(62)、自民、公明が推す前宜野湾市長の佐喜真淳氏(58)、前衆院議員の下地幹郎氏(61)が立候補する見込みだ。9月11日に投開票される。
 新型コロナウイルス禍で県経済は低迷し、米軍普天間飛行場の辺野古移設を巡って県と国の対立が続いている。現状をどう打開していくのかが問われる選挙だ。
 3氏の政策は、辺野古移設を巡って最も大きな隔たりを見せている。
 佐喜真氏は普天間飛行場の2030年までの返還を掲げ、移設を容認。玉城氏は「新基地は造らせない」と移設阻止の構えを崩していない。下地氏は移設工事の続行に反対する点では玉城氏と同じだが、普天間飛行場は民間空港として存続させ、台湾有事などの際は国防のために使用可能とする考えだ。
 辺野古問題を巡る国、県の対立は、沖縄振興予算の大幅な減額という形で県民生活にも影響を及ぼしている。岸田政権が推す佐喜真氏が当選すれば、翁長雄志前知事時代から続く国とのぎくしゃくした関係が解消され、協調姿勢へと転換する可能性が高い。
 下地氏は沖縄振興予算の減額を厳しく批判し「国に頼らない沖縄をつくる」と宣言。国とあえて対立することを辞さず、基地問題以外でも沖縄独自の政策を積極的に推進する「逆転の発想」を示す。
 玉城氏は県民投票などで示された辺野古反対の多数意思を「ぶれずに貫く」と訴える。移設の設計変更申請を不承認とした県の処分を巡り、新たな法廷闘争も始まっており、国との対立が当面続く。
 辺野古移設は普天間飛行場の危険除去のため、日米が「唯一の解決策」として合意。辺野古沿岸の埋め立て工事も着々と進む。3氏がこの現状にどうアプローチするか、県と国の現在の距離感を有権者がどう判断するかが問われそうだ。
 今月は中国が台湾を包囲した軍事演習を行い、弾道ミサイルが与那国島や波照間島周辺の日本のEEZ(排他的経済水域)に着弾する衝撃的な事件が起きた。
 台湾有事が日本有事であり、より正確には沖縄有事であることが誰の目にも明らかになった。このタイミングで行われる知事選では、安全保障に対する3氏の考え方が問われる。
 玉城氏は台湾有事を防ぐための対話を重視し、先島への陸自配備をはじめとした抑止力の向上は緊張を高めるだけだと疑問視する。
 下地氏は知事として関係諸国である台湾、中国、米国に直談判し、沖縄自身の努力で地域に平和を構築する決意を強調する。
 佐喜真氏は台湾有事に関し積極的に言及していないが、岸田政権と足並みを合わせ、抑止力の必要性を認める立場を示している。
 国民が「平和」を連呼し、憲法9条を守っていれば世界も平和になるかのような「一国平和主義」の幻想は通用しない時代になった。知事選を機に、沖縄だからこそできる安全保障の論議を深めてほしい。

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