竹富町の西大舛高旬町長が官製談合防止法違反などの容疑で逮捕された。現職の首長逮捕は八重山では前例のない異常事態である。
容疑は公共事業の発注に伴う汚職であり、住民の行政に対する信頼が大きく揺らいでいる。今後の捜査の推移を見守る必要もあるが、自治体関係者は公共事業の透明性確保に向け、改めて自らを正す必要がある。
竹富町の島々には昭和50年代に海底送水管が敷設されており、現在、ちょうど更新時期を迎えている。問題の工事は2020年に実施された石垣島―竹富島間の海底送水管の更新事業だった。
西大舛容疑者は工事の最低制限価格を落札した事業者に漏えいした疑いがもたれている。競争入札では、最低制限価格に近い金額を提示した業者が有利になるため、容疑が事実とすれば入札の公正性を揺るがす行為になる。
町長と事業者の癒着はなかったのか、さらには情報漏えいに伴う金銭の授受などはなかったのか。今後の捜査でしっかりと事実を解明する必要がある。
西大舛容疑者は保守本流の政治家として議員歴が長く、町議会議長なども歴任した。「大統領」の異名を取るほど政治力があり、豪快で面倒見が良いキャラクターで知られていた。
決断力や実行力には定評があり、2期目の町長選はコロナ禍という特殊事情もあったとはいえ無投票当選で、実績は高く評価されていた。
町内外を問わず、さまざまな人脈があり、酒席の場で姿を見かけることも多かった。政治家としては当然とも言えるが、そうした付き合いが特定の業者との癒着につながったのであれば残念だ。
自公連立政権とのパイプも太く、予算獲得でも手腕を発揮していた。政治家として順風満帆だっただけに、逮捕は町の将来にも禍根を残した。
今回の問題を機に、首長だけでなく行政機関の職員も、自治体の業務に関連する事業者との付き合い方を改めて見直す必要があるだろう。
行政運営といえども民間の力を借りなくてはいけないことは当然だが、万が一にも不透明、不公正のそしりを受けないよう、適切な距離感を保ちながら連携していく必要があるということだ。
県内では復帰後、現職の首長が汚職などで逮捕される事件が数件発生しており、最近では前宮古島市長の贈収賄事件が記憶に新しい。八重山にもこのような波が及んできたことを、住民も含め重く受け止めなくてはならない。
町役場は全国のメディアの取材が殺到するなど混乱のさなかにあるが、副町長が職務代理を務めることになり、行政の停滞を招くことなく乗り切っていくとコメントを出した。町民生活に支障がないよう、業務には粛々と取り組んでほしい。