【視点】不安定化する民主主義陣営

 日本と韓国、米国は独裁的な中国やロシアに対抗する民主主義陣営の「チーム」としてアジアで連携強化を進めてきた。ところが、ここへ来て日本と他の2国の関係が不安定化する兆しも見えている。
 韓国では「非常戒厳」を宣言した尹錫悦大統領が内乱罪容疑で拘束された。現職大統領の拘束は初めてで、尹大統領は既に職務を停止されている。韓国は半ば無政府状態に陥った。
 日韓関係は、文在寅前大統領時代に徴用工問題などで極端に悪化した。尹大統領は一転して日韓関係改善に取り組んだが、その姿勢を「親日的」と激しく批判してきたのが野党「共に民主党」だ。
 尹大統領の失脚で野党中心の新政権が誕生すれば、韓国は再び「反日」に傾斜し、日韓関係は暗黒時代に戻るとの見方が強まっている。
 尹大統領の「非常戒厳」も民主主義国家にあるまじき暴挙だった。だが、その後の大統領弾劾、拘束といった事態の推移を見ていると、野党と検察によるクーデターが進行しているようでもある。「この国では法が全て崩壊した」という尹大統領のコメントも、あながち的外れではない。
 この状況では、韓国を信頼して機微に触れる外交を展開するのは無理だと思える。日韓の連携が破綻すれば、アジアでの中国の覇権拡大、北朝鮮の核・ミサイル開発に対する抑止力が損なわれてしまう。
 日本が外交の「基軸」と位置付ける日米関係も、順風満帆とは言えなくなってきた。バイデン米大統領が日本製鉄のUSスチール買収を禁止する命令を出したためだ。
 理由としてバイデン大統領は「国家安全保障上の懸念」を挙げた。日米は同盟関係にあり、安全保障の利害は一致しているはずだったが、その建前が崩れたことになる。
 さらに日本人を驚かせたのは、日本製鉄に代わってUSスチール買収に意欲を示した米鉄鋼大手クリーブランド・クリフスのゴンカルベス最高経営責任者(CEO)の発言だ。
 第二次大戦を引き合いに「日本は中国より悪い」と述べ、公然と日本批判を展開した。一部の言動としても、米国の有力者が公の場で堂々と「反日」を表明する現実は、日本人を失望させる。
 日本では、共和党のトランプ次期大統領に対し「同盟や多国間連携を軽視している」との批判が根強い。だが自国の内政優先という意味では、民主党の現政権も結局は五十歩百歩であることが露呈された。
 中国、ロシア、北朝鮮を念頭にした安全保障面の連携と、USスチール買収のような経済面での連携は質的に異なる。USスチール買収問題が日米同盟に亀裂を入れることはないはずだ。とはいえ、自国優先を理由に他国の指導者を非難する風潮は、日本人の甘さ以外の何物でもないことが明らかになった。
 今後とも3国の連携強化を図るのは当然だ。しかし外交面で、日本の足元が揺らいでいるという自覚は必要である。
 日本が対応を誤れば、それは台湾情勢の悪化などの形で跳ね返ってくる恐れが強い。真っ先にツケを支払うのは沖縄県民ということになるかも知れない。

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