【視点】終焉見え始めた「オール沖縄」

 沖縄の「選挙イヤー」は自民・公明が知事選と参院選を落としたものの、7市長選を全勝して終わった。2014年知事選以来、沖縄政界を席巻してきた「オール沖縄」勢力だが、今年の主要選挙を見る限り、いよいよ終焉が見え始めたように感じられる。
 「オール沖縄」とは保守・革新を問わず、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に反対するために結集した政治勢力で、故・翁長雄志前知事の時代に主要な国政、県政選挙で勝利し、全盛期を迎えた。
 だが、その後は衰退傾向が続く。今年は知事選、参院選こそ制したものの、いずれも対抗馬の保守勢力が分裂した選挙であり、一騎打ちであれば勝敗の行方は分からなかった。
 特に天王山の知事選では玉城氏の得票率は51%にとどまった。「オール沖縄」という名称にかかわらず、玉城県政への支持は有権者の半数程度というのが現状のようだ。
 23日に投開票された那覇市長選の結果は象徴的だった。かつて翁長氏が市長を務めた県都・那覇で、しかも翁長氏の次男を擁立するという必勝態勢でありながら「オール沖縄」勢力は敗れた。
 「オール沖縄」勢力側は何とか辺野古移設の是非を争点化しようと試みたが、共同通信の出口調査によると、有権者が重視したのは「経済振興への姿勢」が最多だった。
 新型コロナウイルス禍で沖縄経済も大打撃を受け、有権者の関心は基地問題から経済問題へとシフトしている。そうなると国とのパイプが太く、独自の経済政策を打ち出しやすい自公が相対的に優位になる構図だ。
 「オール沖縄」勢力は、もともと選挙に勝つことを至上命題にした寄り合い所帯である。辺野古移設が争点にならなければ選挙に勝てず、争点になった場合でも勝利は覚束ないとなれば、存続は難しい。
 あくまで組織の存続を目指すのであれば、従来のように、支持のすそ野を保守層に広げなくてはならない。だが「オール沖縄」勢力の実態は、今や本土の野党共闘と同一だ。
 辺野古移設だけでなく、沖縄に関係する安全保障政策でも革新リベラル寄りの姿勢が著しい。現状では、保守層を呼び戻せる要素はほぼ見当たらない。
 那覇市長選の結果を受け「オール沖縄」勢力に擁立された市長が在任するのは県内11市中、辺野古に無関係な離島の宮古島市のみとなった。
 玉城県政は足元の那覇市も含め、保守中道勢力の市長に包囲されたような形で、政府との対決に臨む。もはや、それ自体が非現実的な話ではないか。
 玉城県政に求められているのは、革新リベラルに寄り過ぎた政策を中道に修正し、政府との正常な関係を構築すること、そして的確な経済振興策を展開することだ。辺野古にこだわり続けても展望は開けない。

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