防衛力「5年以内抜本強化」 先島の空港・港湾利用明記 有識者会議報告

 防衛力強化に関する政府の有識者会議(座長・佐々江賢一郎元駐米大使)は22日、「5年以内に防衛力を抜本的に強化しなければならない」と求める報告書を岸田文雄首相に提出した。報告書では、南西地域、特に先島諸島の空港・港湾に関し、自衛隊と海上保安庁の利用に向けた規程の整備などを明記した。

 周辺国が核ミサイル能力を増強し、変則軌道や極超音速のミサイルを配備するなど、日本を取り巻く厳しい安全保障環境を列挙。「反撃能力」の保有と増強が抑止力の維持・向上に不可欠と強調した。
 反撃能力に関しては、5年を念頭に十分な数のミサイルを装備するよう求めた。発動に際して「政治レベルの関与の在り方について議論が必要」とも記した。継戦能力を高めるため、これまで十分ではなかった弾薬や施設の拡充を提唱した。
 防衛装備移転三原則などの制限をできる限り緩和し、日本の装備品を積極的に他国に移転できるようにすべきとした。有事には防衛相による海上保安庁の統制、海保と自衛隊の連携も重要な課題とした。
 政府、大学、民間が一体となって宇宙や人工知能(AI)など、防衛力強化につながる研究開発を進める仕組みづくりを促した。
 南西諸島の港湾や空港などのインフラは「安全保障上の重要な機能を担い得る」と指摘。有事に備え、空港・港湾を平素から利用するルール作りを要望した。
 特に先島諸島の空港・港湾利用を想定し「特定重要拠点空港・港湾」(仮称)の整備・運用方針を定め、空港法・港湾法に基づく基本方針に反映させる。
 一方「自衛隊が空港や港湾を使用することに対して抵抗感のある地方自治があることも事実」と述べ、避難施設の整備も含め、地方自治体や住民の協力を得る必要性に言及した。
 防衛費の安定財源確保に関しては「国民全体で負担することを視野に入れなければならない」と訴えた。国債発行を前提としないよう求め、幅広い税目による負担が必要なことを明確にすべきとして、事実上、増税の必要性を提起した。具体的な税目には触れなかった。
 政府は22日に示した2023年度予算編成の基本方針案でも、5年以内の防衛力抜本的強化を盛り込んだ。年末までに新年度の予算規模などの結論を出す考え。

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