【視点】市民目線が欠落している

 行政は常に市民の目を意識し、市民と同じ目線に立って進めなくてはならない。だが石垣市が新任課長との意見交換会で配布した資料には、議会答弁について「一般的に、与党であれば前向き・積極的な答弁となり、野党であればその反対になります」と記されていた。行政内部の論理だけが目立つ文章だ。
 「公務員の議会答弁術」という書籍の抜粋だという。民主主義や市民の福祉増進といった、本来、公務員が最優先で考えるべき視点ではなく、目の前の議会をいかに乗り切るかというマニュアルに終始した文章に見え、一般市民には理解し難い。
 残念ながら市民目線が欠落している。新任課長に配布する資料としては、不適切のそしりを免れない。
 資料の存在は野党市議の情報公開請求で一般に明らかになった。市は「外部に公表することは想定していなかった」「資料の一部だけを切り取られて問題視され、誤解を招いた」などと釈明している。
 だが公文書として資料を作成し、意見交換会の参加者に配布した時点で、それがいずれ一般の目に触れる可能性も考えておくべきだった。市に緊張感が欠けていたことは否めない。市は猛省し、改めて市民目線に立った行政を心がけるべきだ。
 中山義隆市長は、文書を作成した総務部長を厳重注意する意向を示した。しかし市議会では、6月議会の最終本会議で野党が部長を適切に処分するよう求める決議を提案し、賛成多数で可決された。
 議会が一職員の処分を要求する決議を行うことは異例で、与党からは議会が行政の権限に介入しているのではという疑問の声も上がった。
 市が作成した資料を巡っては野党が「二元代表制の否定だ」と批判を展開したが、議決のあり方も含め、行政と議会の役割分担はどうあるべきかも再考する必要がある。
 市議会では改選当初、与党勢力が優位と見られていた。だが保守系の中立3人が野党と共闘する場面が増え、少数与党の状況が鮮明になってきている。
 中山市長の副市長人事は2度にわたって否決され、6月定例会では上程を断念せざるを得なかった。市長肝いりの児童生徒に対する栄養機能食品配布事業も市議会で予算が削除され、いったん中止となった。
 総務部長の処分を求める決議も11対10の僅差だったが、与党優位の市議会であれば可決は考えられなかった。中山市政と議会の緊張関係が先鋭化している。
 中山市政は、議会の多数派の賛同を得て自衛隊配備問題を乗り切った。だが今後はケースバイケースで、市長の政策が議会に阻止される場面が増えるかも知れない。その意味でも、市には一層の緊張感が求められている。

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