【視点】返礼品に「尖閣」漁の活性化期待

石垣市が8月から、尖閣諸島周辺海域で獲れた「尖閣アカマチ」をふるさと納税の返礼品に加える。返礼品に尖閣ブランドが採用されるのは初めてだという。停滞している尖閣諸島周辺海域での漁を活性化する効果が期待されそうだ。
尖閣諸島は、言うまでもなく石垣市の行政区域だ。市によると、尖閣諸島周辺海域は温かい黒潮の流れと大陸からの栄養塩を含む低温の水が混ざり合う潮目に位置している。カツオ、マグロ、カジキ、マチ類などの好漁場だという。
しかし2012年の日本政府による尖閣国有化以降、対抗措置として中国政府が周辺海域に艦船を常駐させ、日本漁船の操業を日常的に妨害するようになった。
漁業者は、中国船が漁船を執拗に追跡し、体当たりするそぶりを見せるなどの威嚇行為に出ていることを証言している。海上保安庁の巡視船が漁船を警護しているため、けが人などは出ていないが、現在、漁業者の多くが尖閣周辺での操業を敬遠している。
石垣島から尖閣諸島まで約170㌔の距離があるため、燃料費の高騰も漁業者には頭の痛い問題だ。出漁後に天候が急変した際の避難港となる施設も整備されていない。周辺海域で漁をする上で、中国艦船の徘徊(はいかい)が一番のネックではあるが、漁の環境整備が進んでいないのも事実だ。
市は国に尖閣諸島で避難港や気象観測施設などを整備するよう長年要請しているが、国は対中関係を考慮し、具体的な行動に出ていない。
ただ日本が有効な対策を打てない中、尖閣諸島の侵奪を図る中国が日本を一方的に押し込む状況が続いている。日本としても何らかのアピールが必要だ。
ふるさと納税の返礼品に尖閣アカマチを加えるアイデアは、地元自治体として、尖閣を守るために可能な限りの行動を展開する意思を示す意義がある。
尖閣アカマチに対する注文が一定数集まれば、八重山漁協が漁業者に出漁を依頼するという仕組みだ。漁業者にとっては、尖閣周辺で操業するモチベーションが高まる。
尖閣周辺に艦船を常駐させている中国側の動きも気になるが、石垣市がチャーター船で海洋調査を実施した際も、海保が万全の警備体制を整えており、領海侵入した中国船は手を出せなかった。市も、尖閣周辺での操業は問題ないとの立場を示している。
中国船の不法侵入や威嚇行為に漁業者が委縮してしまっては、中国側の思うつぼだ。ふるさと納税が尖閣周辺海域を目指す漁業者を勇気づけ、安定的な収入源となることを願いたい。
2020年に来日した中国の王毅外相(当時)は、尖閣周辺で操業する日本漁船を「偽装漁船」呼ばわりし、政治的な目的で操業していると主張した。
漁業者の正当な権利を脅かす自国の行動を、臆面もなく正当化する卑劣な言動だ。尖閣周辺の操業実績を積み重ねることで、中国側の一方的な宣伝も打破していく必要がある。

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