離島振興「県政が阻害」批判も 空港強化で地元と温度差

町が滑走路延長を求めている与那国空港=2019年12月20日

 県内空港・港湾の特定重要拠点指定を巡り、木原稔防衛相が「管理者が県である場合は、県の合意が必要」との認識を示した。県は空港・港湾の軍事利用を警戒し、指定に慎重姿勢。県内で特定重要拠点の枠組みを活用したインフラ整備が進むかは見通せない。一方、指定を望む石垣市、与那国町は「知事は速やかに空港整備の予算要求をしてほしい」(中義隆市長)と要求しており、県との温度差は鮮明。「反軍事」を理由に離島空港の整備を拒み続るなら、玉城デニー県政そのものが離島振興の「阻害要因」になりかねない。

 政府は9月以降、県庁や石垣市役所、与那国町役場などに職員を派遣し、県内空港・港湾を特定重要拠点に指定する可能性を説明。早ければ来年度予算から関連事業費を盛り込みたい意向も示した。
 一方、県は12月に新石垣空港、与那国空港の滑走路延長も含め、指定候補となっている空港・港湾の整備費に関し、来年度の予算要求をしないと政府に伝達。前川智宏土木建築部長は報道陣の取材に対し「自衛隊などの使用の考え方について、不明な点が残されている。24年度の予算要望は行えないと回答した」と説明した。
 玉城デニー知事が特定重要拠点の指定に慎重なのは、県議会与党をはじめ支持層から「空港・港湾が軍事拠点化されると、有事に攻撃対象になる」という懸念の声が上がっているためだ。
 与那国町の糸数健一町長は12月、県庁で池田竹州副知事と会い、特定重要拠点の制度を活用して与那国空港の滑走路延長や町内の新港湾整備を進めるよう要請。しかし池田副知事は「(指定には)懸念をクリアにする必要がある」と消極姿勢に終始した。
 石垣市は18年から計11回、八重山市町会などの枠組みを使い県に新石垣空港の滑走路延長を要請。市議会12月定例会でも県に対し、滑走路延長の関連予算を国に要求するよう求める意見書を可決した。しかし県は、滑走路延長後の民間需要が不透明であることを理由に、要請に応じる気配を見せない。
 中山義隆市長は「滑走路延長などの空港整備は離島苦解消の起爆剤になるので、市として長年要望してきた。国も安全保障や国民保護の観点から予算付けしようとしている。県が手を上げないために整備が進まないようなことは、あってはならない」と断じる。
 糸数町長は、特定重要拠点の指定は県の合意が前提とする政府の見解について「それで国防が成り立つのか。国防は国の専権事項なのだから、国もおかしい」と疑問視。県の姿勢に関しては「インフラ整備に向けた千載一遇のチャンスなのに、県は『与那国は発展しなくてもいい』と言うのか。はなはだ遺憾だ」と批判した。
 県が民間需要を理由に与那国空港の滑走路延長も渋っていることに対し「詭弁ではないか。需要は喚起するものだ」と反論した。
 玉城県政は米軍普天間飛行場移設問題などの重要課題で、常に支持層の意向を優先する政策を打ち出してきた。特定重要拠点の指定に関しても「反軍事」「反基地」の旗印にかかわる問題だけに、容易には同意しないとの見方がある。
 八重山でも「滑走路延長は望むところだが、自衛隊が利用するためであるなら同意できない」(石垣市の革新系市議)という声はあり、地元が県政と必ずしも一枚岩で対立しているわけではない。市議会の意見書採決の際、革新系の野党は反対または欠席した。
 ただ、八重山では空港整備に限らず、石垣市の民間ゴルフ場建設、新石垣空港アクセス道路整備など、県が関わる大型事業が軒並み停滞している現状がある。
 滑走路延長に関する県の予算要求見送りを受け、中山市長はX(旧ツイッター)に「離島振興なくして沖縄の振興なしという知事の言葉は何処(どこ)へ?」と投稿。玉城県政の離島政策に対し、不満をあらわにした。

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