中国が南シナ海で、領有権を争うフィリピンの船舶に対し攻撃的な行動を強めており、フィリピン側に負傷者が出るなど、緊張が高まっている。石垣市の尖閣諸島周辺でも、常駐する海警局の艦船がすべて重武装船に交代し、武力を背景に圧力をかける姿勢が顕著だ。
実力行使で領土・領海を拡張しようとする中国共産党政権の振る舞いは時代錯誤的であり、紛争の危険性を増幅させるだけだ。中国は直ちに態度を改め、関係各国との平和的な対話に応じるべきである。
南シナ海で中国は、ほぼ全域の領有権を主張し、軍艦や海警局船を派遣。フィリピン船への放水や体当たりなどの危険行為を繰り返している。フィリピンのテオドロ国防相は「中国の行動が南シナ海の平和の障害になっていることが明白になった」と訴えた。
中国が今月15日に施行した「海警機構行政執行法手続き規定」は、2021年に施行し、海警局の武器使用を認めた「海警法」を執行するための詳細規定のようだ。中国領海に違法侵入した疑いがある外国人を最長60日拘束できることを盛り込んだ。
海警局船は新法令に基づき、フィリピン船に臨検を実施したと発表した。フィリピンメディアによると、中国側はフィリピンのゴムボートを一時拿捕し、ボートに穴を開けるなどの行動に出たという。新法令施行を口実に、南シナ海支配に向けた行動をさらにエスカレートさせているとしか思えない。
尖閣諸島周辺の海警局船が同じタイミングで武装強化したのも、恐らく偶然ではないだろう。
海警局船は4隻体制で常駐し、領海侵入を常態化させている。日本の海上保安庁によると、これまでは4隻のうち1隻に砲らしきものが搭載されていたが、今月から4隻すべてが砲搭載船に交代した。一方的に緊張を高める中国の行為は南シナ海にとどまらず、尖閣周辺にも及ぼうとしている。
中国の新法令施行を機に、尖閣諸島周辺を操業する八重山の漁船が悪辣な妨害行為や、直接的な攻撃に遭う恐れはないのか。漁業者の安全に関わる問題だけに、懸念が深まる。
ただ尖閣周辺の海警局船は南シナ海とは異なり、現時点で日本漁船への体当たりや拿捕までは試みていない。一定程度、行動を自制しているようだ。
南シナ海との違いは、一つには領海警備に当たる海保が質量ともに優勢で、巡視船が鉄壁の守りを構築しており、海警局船といえども日本の船舶に簡単に手出しできないことが挙げられよう。
また政治的には日米同盟が存在し、尖閣を侵略すれば米国との対決が予想されることが、中国を踏みとどまらせていると考えられる。
ただ、中国は年々驚異的な勢いで軍事費を増大させている。海警局が保有する艦船も、数量では既に日本を上回る。尖閣周辺がいつ、南シナ海のような熾烈な争いの海と化すのか、全く楽観できない状況である。
日本は今後とも中国に平和的な対話を促していかなくてはならない。だが台湾に対しても高圧的な中国共産党政権の体質を見ると、話し合いだけで事足りるとは思えない。沖縄周辺の平和を守るため、抑止力の強化が不可欠である。