【視点】陸自配備は容認を明確に

 石垣島への陸上自衛隊配備計画などが問われた石垣市長選では、現職、中山義隆氏が3選を果たした。同じ保守系の砂川利勝氏が出馬し、保守分裂選挙となったことで当初「中山氏の当選は厳しいのでは」と見られていたが、ふたを開けてみれば予想外の圧勝で、砂川氏、革新系の宮良操氏を寄せつけなかった。強固な自公選挙協力体制と、中山氏の個人的な人気が勝敗を大きく左右したと見られる。

 中山氏は初当選時から若者を中心とした無党派層に根強い支持があった。若さと爽(さわ)やかなルックスで、巧みなイメージ戦略を展開し、石垣市の「劇場型政治」の幕を開けた。

 経済振興を政策の柱に据え、好調な観光を例に「流れを止めるな」とアピールした。子育て支援策などの浸透にも力を入れた。自民党本部の支援や指導もあっただろうが、宣伝戦では常に他の2候補の一歩先を行っていた。八重山日報が期日前投票で実施した出口調査では、無党派層の過半数の支持を得るには至らなかったが、3氏の中で支持率はトップ。砂川氏の出馬で目減りした保守票を、無党派層の票がカバーした格好だ。

 宮良氏は、市民の一部にくすぶる陸自配備への不安感を、うまく得票につなげられなかった。砂川氏は、保守を分裂させてまで出馬する「大義」を支持層に納得させ切れなかった。いずれも「劇場型政治」の演出力で中山氏に引けを取った。

 選挙に強いことは、政治家にとって何よりの強みである。ただ中山氏に対しては、支持者の中ですら強い不満や不安の声がある。宮良氏や砂川氏は選挙戦で「中山氏は市民の声を聞かず、独断で行政運営を進めている」と批判を強めていた。今選挙が突如として保守分裂選挙となったこと自体、一見盤石に見える中山市政が、内部に意外なもろさを抱えていることを示している。

 本紙インタビューで中山氏は、保守分裂選挙となった責任を問う声があることについて「分裂ではなく、話し合いで解決できるものだったと思う」と述べたが、特に反省の弁はなかった。3選を全面的な市民の信任と解釈し、強気一辺倒の行政運営で謙虚さを欠けば、思わぬしっぺ返しに遭いかねない。分裂選挙をむしろ好機とし、不満を抱く支持層との丁寧な対話に務めてほしい。

 陸自配備計画に対しては、地元の市長として受け入れか拒否かの二者択一しかない。中山氏は受け入れの可否を明言せず選挙戦に突入したものの、落選した2氏は現計画に対しては反対姿勢を明確にしていた。この結果から、少なくとも配備の必要性を認める一定の民意は示されたと解すべきだ。尖閣諸島を抱える市の責任ある首長として、中山氏は早期に配備容認の姿勢を明確にしてほしい。

 中山氏を支えた自民、公明、維新のスクラムは名護市長選に続き、石垣市長選でも結果を出した。今秋の知事選での県政奪還に向け、また一つ大きな布石を打ったことになる。

 一方、「オール沖縄」を名乗る革新陣営は、訴えの根幹である安全保障問題をめぐり、辺野古移設反対、自衛隊配備反対を訴えた選挙で立て続けに敗れた。早急な選挙戦略の立て直しが必要だ。

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