オール沖縄は「緩やかに消滅」 野党は是々非々で対峙を 翁長政俊氏インタビュー(下)

 ―「オール沖縄」の運動をどう総括するか。
 「辺野古の反対闘争は、県政の喉に刺さったトゲのような政治問題になり、30年が経過してしまった。現在は埋め立て工事が進んでいるが、反対運動が普天間飛行場の危険性を放置させ、経済振興を遅滞させていることは事実だ。反対運動が移設を足踏みさせる時間だったことは間違いないが、歴史的な時間軸から言うと、移設が完成すれば『あの30年は何だったのか』ということになる」
 「沖縄では、重要な政策が実現するには20年かかると言われる。環境問題などを絡めてイデオロギーによる反対闘争が起きるからだ。それと同じことが辺野古でも言える。『オール沖縄』はその典型例だった」
 ―もし仲井真弘多知事が2014年に3選され『オール沖縄』県政が誕生していなければ、沖縄振興や普天間飛行場問題はどう進展していたと思うか。
 「仲井真氏が当選していれば、嘉手納以南の米軍基地返還も着手されていた可能性がある。那覇を中心とする西海岸エリアの軍港返還もめどがつき、沖縄振興はダイナミックに動き、鉄軌道の計画も進んでいたかも知れない」
 「鉄軌道が実現すれば、那覇から名護までが通勤圏になる。新たな駅ができてニュータウンができる。若い人たちが移り住んで戸建ての家を持てるので、夢と希望が持てる。返還後の普天間飛行場跡地利用構想、那覇軍港の再開発計画が進み、活性化していただろう」
 「しかし翁長県政の4年は、辺野古のワンイシューに固執するあまり、政府との対立が続き、玉城デニー知事になっても、新たな沖縄振興のプロジェクトで見るべきものは何もない」
 「玉城知事は『県政の7~8割は基地問題に費やしている』と言っている。それ以外の県民生活に直結する課題、沖縄振興予算の獲得の努力は不十分で、保守県政と比較しても一段と劣っている。玉城県政はイデオロギー闘争に陥りがちで、県民生活の視点が抜け落ちていないか」
 ―翁長政俊氏が考える沖縄の将来像は。
 「沖縄は離島県なので『島ちゃび』という言葉もあるが、物流一つとっても大きなコストがかかり、生活は容易ではない不利的条件の下ある。沖縄が発展するにはどうあるべきか、不利性を克服し産業を興し、生活環境を整備して特色ある沖縄経済を確立する必要がある。自然と開発のバランスを取りながら、基幹産業である観光リゾートの在り方を展望しないといけない」
 「米軍基地の過重負担は現実に存在し、大きな問題だ。米兵絡みの事件事故も起きている。日米地位協定の抜本的な改定も含め、政治の知恵を出して具体的に負担軽減を進めるべきだ。沖縄の保守は本土の保守とは違う。基地の過重負担を軽減するために、政府に直言しなくてはならない」
 ―「オール沖縄」はどうなるか。
 「一過性のムーブメントなので、緩やかに消滅に向かっていくだろう。ピークは翁長県政の時代だった」
 「今回、野党が県議会で過半数を取ったことで、是々非々主義をもって玉城県政と対峙することが肝要。玉城県政は行政を使った政治パフォーマンスが過ぎるので、今後、野党が厳しくチェックすることが必要だ。恐らく県ワシントン事務所の予算を切るなどのアクションを起こすだろう。辺野古を巡る新たな裁判の提起も容認しない。2年後の知事選に向け、玉城県政にボディブローのような打撃になる議会運営が予想される」(終わり)

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