与那国町の田里千代基町議は9月28日、那覇市で開催された国会議員・県議会議員による同町視察後の報告会に登壇し「自衛隊の配備について住民投票をしたが、町民の分断を招いた」と述べた。駐屯地ができて人口が増えたことは評価した。会場で配られた資料では、比川の新港計画を問題視。最新の海自護衛艦も接岸できないと主張した。
与那国町が国に要請した新港計画について、資料では水深5㍍、航路幅200㍍、停泊した船舶が進行方向を変える回頭水域は300㍍、岸壁長は200㍍か250㍍と指摘。この規模の港湾の場合、全長150㍍、最大喫水4・5㍍程度の船舶しか接岸・停泊できないとした。港湾の計画図では、利用予定の船舶は旅客フェリーを想定している。
海自が配備を進める「もがみ型護衛艦」の場合、喫水が4・7㍍であるため、仮に現行計画で港湾が完成した場合、接岸時に船底が海底に接触する可能性がある。ただ、港湾の水深を10㍍まで深くするとの情報もあり、この場合、「もがみ型」はタグボートの支援を受けて同港湾を使用できると見られる。
資料では、比川港湾の水深は5㍍と浅く、自衛隊や米艦船、クルーズ船の多くは入港できないと主張。予定地の樽舞湿原の基礎地盤は硬く、掘削の難しさを指摘。加えて発生した残土の処分方法も疑問視した。
一方、町側は議会で新港計画について民主党政権時に国側が町に持ちかけたと説明し、糸数健一町長も「私が言い出した計画ではない」と、繰り返し田里氏に対し答弁している。
比川の新港計画を巡っては、糸数氏を支援する与党議員も反対する姿勢で、祖納港の拡大を求める動きを見せている。久部良漁港の拡大を求める声もある。
田里氏は与那国島で自衛隊の拡大が続くとし「全住民に占める自衛隊関係者の割合が増える。地域環境が変わってしまう」と懸念した。