障がい者と肩並べ作業 本土の生徒「農福連携」体験 市出身新里さん農園

新里さん(最前列左から2番目)、農園スタッフと関東学院高等学校の生徒たち=12日、うるま市の農園

 障がい者を雇用して「農福連携」に取り組むうるま市の農園を12日、関東学院高等学校(神奈川県横浜市)の2年生20人が研修旅行で訪れた。農園を運営しているのは石垣市大浜出身で、ウイングアーク1st(ファースト)株式会社ダイバーシティ雇用室長の新里えり子さん(51)=うるま市=。「障がい者も健常者も一緒に肩を並べてジャンプできる社会を目指したい」と、農園で共生社会を体現している。

 新里さんの農園では、ワイン用に使うブドウのリュウキュウガネブを栽培。生徒たちはまず宇堅ビーチを訪れ、畑の肥料にする海藻を採集した。農園で働く障がい者のスタッフたちも手伝った。
 新里さんは両親が石垣島のパイン農家。海藻を肥料化するアイデアについて「八重山のおじー、おばーも昔から使っていた」と出所を明かす。
 農園に到着した生徒たちは、障がい者のスタッフたちからカマの使い方を学び、肩を並べて雑草を刈り取った。海藻は作物の根元に敷いた。
 慣れない農作業で蚊にも悩まされたが、雑草の陰に隠れていたバッタを発見して大はしゃぎする生徒も。都会では味わえない貴重な体験に時を忘れていた。
 新里さんは、生徒に付き添ったスタッフが障がい者であることを、あえて事前に知らせなかった。障がい者への先入観を排する狙いだ。
 農作業に励んでいた生徒の武元愛美さんは、カマの使い方を教えてくれた女性スタッフが障がい者と聞き「えっ。全然違いを感じなかった。丁寧にカマの使い方を教えてくれて、先輩みたいだった」と目を丸くした。
 新里さんは「障がい者を一つの枠に収めないでほしい。彼ら、彼女らも健常者と接することで、いろいろなことを吸収し、成長できる。(ハンディは)障がいではなく個性」と、健常者と障がい者が共同作業する意義を強調する。
 大浜小、大浜中、八重山高校を経て東京の大学に進学した新里さんは、IT企業を40代で退職。2018年に新規就農した。
 沖縄では農福連携の先駆者。早くから障がい者の雇用に関心を持ち、農水省から「農福連携技術支援者」の認定を受けている。
 現在、本島内の農園6カ所をウイングアーク社に委託し、自らは社員として切り盛りに当たる。県外からの修学旅行などの受け入れにも積極的だが、生徒に農福連携を体験してもらうのは初めて。
 ウイングアーク社は東京に本社を置くIT企業で、SDGsの一環として農福連携を推進している。鹿島忍サステナビリティ推進室長は「ダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公平性)、インクルージョン(共生)の理念を体現している」と新里さんの活動を評価した。

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