沖縄県が新石垣空港、宮古空港、中城湾港の「特定利用空港・港湾」指定に同意する方向で検討を始めた。地元自治体からも空港・港湾機能の強化を求める声が上がっており、県がようやく同意に前向きな姿勢を示したことは評価できる。
だが、台湾に近く有事への懸念が根強い与那国町の与那国空港などは同意の対象から外れている。県が指定に同意するとしても、なぜ3施設だけなのか。
政府が「特定利用空港・港湾」の指定を進める意図を県は果たして理解しているのか。中途半端な同意の検討には懸念を抱かざるを得ない。
「特定利用空港・港湾」は、有事を見据え、自衛隊や海上保安庁が平時から円滑に空港や港湾を利用するための仕組みを国とインフラ管理者で構築するための制度だ。指定されれば、空港・港湾の機能強化が国主導で進むことが期待される。
空港・港湾機能の強化は有事には住民避難の円滑化、平時には観光振興にもつながる。
八重山では新石垣空港、波照間空港、与那国空港、与那国町で今後整備の可能性がある新港湾などが候補に挙がった。
特に石垣市と与那国町は指定を強く要望したが、空港管理者の県が同意に慎重姿勢を示し、今年度指定されたのは八重山では石垣市管理の石垣港、県内ではほかに国管理の那覇空港だけだった。
だが、県議会2月定例会開会中の今月、池田竹州副知事らは与党会派を対象に、指定の同意に向けた検討を開始したことを説明した。
この中で同意の対象が新石垣空港など3施設だけであること、国の2025年度予算案に空港・港湾の整備関連事業を反映させるには、2月中の同意がタイムリミットであることも明かされたという。
与那国町の空港や港湾に関しては、町の強い要望にもかかわらず、県は民間需要の低さを理由に、空港滑走路延長などの機能強化に消極的な姿勢を続けている経緯がある。
今回も与那国空港などが同意の検討対象から外れているのは、対象となる施設の選定基準が民間需要の高さであることをうかがわせる。
だが、民間需要が見込めず通常は整備が困難な施設でも、有事対応の必要性があるなら国が主導して整備を進めるというのが「特定利用」の趣旨ではないか。
県が同意の対象から与那国空港などを除外しているのは、有事対応という制度の側面をあえて無視しており、相変わらず本末転倒の感をぬぐえない。
県の説明に対し、与党からは「空港・港湾の軍事利用につながる」と同意を疑問視する声が上がった。
さらに代表質問で県当局は同意に関する明言を避け、池田副知事は「与党が反対する政策は導入が難しい」と答弁した。3施設の同意に関しても、早くもトーンダウンした印象を受ける。
議会のスケジュールも考えると、2月中に同意を表明できるかも不透明な状況だ。
空港・港湾の整備は特に離島の自治体にとっては不可欠である。それを事実上、県が阻止している現状は異常というほかない。早期の方針転換が望まれる。