【視点】尖閣 徐々に間合い詰める中国

 石垣市の尖閣諸島周辺で、恒常化している中国海警局艦船の領海侵入に加え、艦載ヘリの領空侵犯も発生した。尖閣諸島は日本固有の領土であり、日本が実効支配しているが、中国側も日本領の侵奪に向け、徐々に間合いを詰めている。海上保安庁が領海警備に当たり、背後で自衛隊も控えていると推察されるが、住民も含めて現状に危機感を持ち、事態を注視する必要がある。
 3日、尖閣海域を航行している中国海警局艦船から飛び立ったヘリは、約15分間、領空を侵犯し、空自機がスクランブル(緊急発進)して対応した。
 直前には日本の民間機が尖閣上空を目指して飛行しており、中国側はこれに反応したと見られる。中国外務省は翌4日には日本政府に対し「日本の右翼が操縦する民間機が釣魚島(尖閣の中国名)領空に侵入した」と逆抗議した。
 7、8の両日には、神奈川県横須賀市に母港がある漁船が尖閣海域で操業。これに対し、領海侵入した中国艦船2隻が漁船に接近しようとする動きを見せたが、海保の巡視船が阻止した。
 中国海警局は8日「違法に領海に入った日本漁船を追い払った」と発表し「領土主権と海洋権益を守る」と強調した。
 一連の経緯を見て改めて感じるのは、尖閣問題に関する中国政府の迅速な動きと強硬姿勢だ。尖閣諸島を既に日本から奪い取り、尖閣は自国の支配下にあるとの前提で行動していることが分かる。
 中国側の発表をもとに「中国が尖閣海域で操業していた日本漁船を追い払った」と報道している海外メディアもある。中国の思惑通り、領土侵奪の「既成事実化」が進んでいることがうかがえる。
 3日に尖閣周辺を飛行した民間機の機長は八重山日報の取材に対し、中国の艦載ヘリが飛び立ったため、海保の要求で尖閣上空到達前に退避したと証言した。機長は10年前にも尖閣上空を飛行しており、この時は妨害を受けていない。
 尖閣周辺海域では中国艦船が日本漁船の操業を妨害しているが、民間人が海だけでなく、空から尖閣に近づくのも困難になっている現状が浮き彫りになった。これも中国のシナリオ通りではないか。
 日本が実効支配を死守しているとはいえ、リングの隅まで追い詰められつつあるのも事実だろう。
 尖閣諸島情勢が悪化する一方なのは、日本と中国の国力が逆転し、軍事力でも経済力でも中国が日本を圧倒しつつある現状が背景にある。
 日本としてはトランプ関税の悪影響を安全保障分野に及ぼさないよう配慮しながら、日米の連携を密にして中国を押し戻さなくてはならない。同時に南西諸島における自衛隊の増強など、目に見える形で抑止力の強化にも取り組むべきだ。

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