参院選沖縄選挙区では、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に反対する「オール沖縄」勢力の高良沙哉氏が初当選した。だが、選挙戦を終えてみると最大のトピックは「オール沖縄」勢力の議席死守というより、全国共通の現象となった参政党の躍進かも知れない。
高良氏は約26万5千票、自民党公認、公明党推薦の奥間亮氏は約23万2千票を獲得したが、参政党が擁立した和田知久氏の得票も約12万7千票に達した。「オール沖縄」勢力、自公以外の候補の得票としては初めて10万票を超えた。
比例代表の得票率も12・87%で、16・92%の自民党に次いで「野党第1党」となった。こうなると参政党は「オール沖縄」勢力、自公に次ぐ第三極と言っていい。
参政党は新たな保守ムーブメントと見られており、米軍基地を抱え、革新支持層が厚い沖縄でも全国と同様に支持を伸長させているのは興味深い。「日本人ファースト」を掲げ、対米自立を訴える姿勢が、米軍基地問題に敏感な有権者にも受け入れられている可能性がある。
「オール沖縄」勢力、自公とも前回2022年参院選では27万票台を獲得したが、今選挙ではいずれも得票数を減らした。参政党台頭のあおりを受けたのは明らかだが、特にダメージが大きかったのは自公で、保守支持層をつなぎとめられなかったのが奥間氏の敗因だ。
一方の高良氏は、革新支持層を固めたことで何とか逃げ切ったが、得票率は約40%にとどまった。勝利したとはいえ、昨年の県議選から続く「オール沖縄」勢力の退潮傾向に歯止めが掛かったとは言い難い。ましてや「オール沖縄」勢力の復権ではない。
参院選は来年の知事選に向けた前哨戦と見られていた。選挙結果が「オール沖縄」勢力にとって好材料になったことは間違いないが、参政党の躍進を考えると「オール沖縄」勢力、自公ともに先行きを楽観視できる状況ではない。
参政党に対しては、当選した高良氏が「排外主義的」と警戒感を示した。自民党県連の島袋大会長は「見習うべき点もある」とまずは静観の構えだ。
新たに出現した「第三極」に対する距離感は微妙に違うが、選挙対策という意味では自公にとって大きな脅威であり、政治思想的には「オール沖縄」勢力にとって対峙すべき存在ということになるだろう。
参政党ブームは離島の石垣市でも起きた。組織が脆弱な八重山でも和田氏が予想外の強さを見せた理由は何か、得票数でトップだったとはいえ「離島政策が一丁目一番地」と訴えた奥間氏の得票が予想ほど伸びなかったのはなぜか、検証が必要だろう。
参院選で参政党を支持した有権者の動向は、知事選にも大きな影響を与える。参政党のブームが一過性のものなのか、沖縄でも第三極として定着するのか注視したい。