【視点】知事と防衛相、隔たり浮き彫り

 米軍普天間飛行場の辺野古移設を巡って政府と県の関係は袋小路に迷い込み、出口が見えないという意味では現在の日韓関係をほうふつとさせる。岩屋毅防衛相が5日来県し、県庁で玉城デニー知事と会談したが、双方の意見の隔たりだけが浮き彫りになった。
 11日には内閣改造が予定され、両者の顔合わせは今回が最後の可能性がある。移設への協力を求める岩屋氏の説明に対し、知事は聞く耳を持たないという態度で、かたくなに「新基地建設反対」の姿勢を貫いた。
 知事は移設について「反対という県民の民意は揺るがない」と強調。移設予定地である大浦湾に存在する軟弱地盤について「地盤改良工事は、狭い湾内に90隻を超える作業船を用い、7万7千本の砂くいを打ち込む。東京ドーム5・2個分の砂が必要だ。工事自体に不確実性がある上に相当に長い期間を要する」と懸念を示した。これに対し防衛相は、地盤改良に向けた有識者の技術検討会を6日に設置することを報告したが、知事は「技術検討会を設置する以前に、県の指導に従い、工事を中止すべきだ」と取り合わなかった。
 岩屋氏は、辺野古移設が実現した場合「騒音も大幅に軽減され、飛行経路が海上となるので、安全性も格段に向上する」と理解を求めたが、玉城知事から反応はなかった。
 知事と防衛相は同じ辺野古移設を話題としながら、お互いの見ている光景は全く異なる。知事は工事を止めることしか頭になく、防衛相は移設の原点である普天間飛行場の危険性除去と早期返還を訴える。
 知事は工事を一時中断し、県と協議の場を設けるよう要求したが、それは翁長雄志前知事にも実際に行われたことだ。工事を遅延させるための口実でしかないことは明らかで、政府が応じないのは当然だろう。

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