【国境を撮る⑦】北方領土交渉も中国意識 絶好機会だったソ連崩壊

 中国がヨーロッパを目指す場合、日本海、津軽海峡、オホーツク海、択捉海峡を抜けてベーリング海を通る。ロシアにとっては、中国に我がもの顔でそのルートを通られるのは非常な脅威だ。だからロシアは近年、択捉、国後、色丹に計145もの新しい軍事施設を増設している。要するに、ロシアは対中国のためにも択捉島を絶対に手放したくないんだ。
 経済的に貧しかったソ連時代には、択捉島へのインフラ整備は全くなされていなかった。ところが僕が2004年に訪問した時には大きく様変わり。自由化が進み、現地の経済は大きく進んでいた。
 その時、択捉にいるロシア人の女の子に「ソ連からロシアになって、一番良かったことは何」と尋ねてみた。すると「好きなアイスキャンディーが選べること」だと。ソ連時代には1種類しかなかったからね。豊かになり、選ぶことの喜びを感じていたようだった。
 経済的に豊かになると「援助など必要ない」というのが人情。もし91年に亡くなった安倍晋太郎がもう少し長生きしていたら、北方領土問題は違った展開になっていたと思う。要は、ソ連崩壊時こそが最大のチャンスだった。

(敬称略、聞き手・里永雄一朗)

[プロフィール]
 山本皓一(やまもと・こういち) 1943年、香川県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒。雑誌の写真記者を経て、フリーランスのフォト・ジャーナリストに転身。独裁国家の北朝鮮、崩壊直前のソ連、日本の国境の島々を踏破するなど、世界各国をルポルタージュしてきた。日本写真家協会とペンクラブの会員。

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