香港の民主化運動の一環であるデモが激化し、中国政府が国営メディアなどを通じ「暴徒」などと批判姿勢を強めている。香港との境界沿いには武装警察が集結しており、武力弾圧に踏み切るのではないかという懸念が高まる。中国は世界第2位の経済大国であり、米国に並ぶ超大国への道をひた走っている。21世紀にもなって、そのようにグローバルな影響力のある国で人権無視があっていいはずはない。日本も座視できない問題としてとらえるべきだ。
中国メディアは連日、香港のデモを批判的に報じ、デモが暴力的で、社会秩序を乱していると訴えている。デモに同情的な他国の報道は「フェイクニュース」と決めつけた。台湾の民進党政権がデモに理解を示していることにも「破壊活動を扇動している。いかなる方法を取っても犯罪者をかくまうことはできない」と攻撃の矛先を向けた。
18日には主催者発表で参加者約170万人とされる大規模なデモも起き、中国政府の危機感は高まっているようだ。デモの暴力性や違法性をあげつらう報道は、武力鎮圧に向けた布石ではないかとの憶測も強まる。武装警察による制圧訓練も行われている。
香港では選挙制度が民意を十分に反映できず、親中派が政権を握る仕組みが定着している。
同じデモでも、独裁国家と民主主義社会では、デモの性質が違う。民主主義社会では選挙による政権打倒の可能性があるが、独裁国家のデモは自由を死守する最後の手段だ。デモによって空港が閉鎖されるなど、香港で社会不安が発生しているのが事実だとしても、強硬な中国政府や香港政府の姿勢も同様に問題にされなくてはならないだろう。