新型コロナウイルスとの戦いはまだ当分、終わりそうにない。沖縄本島と石垣市で、県内では69日ぶりとなる新規の感染者が報告された。観光客の受け入れが再開され、県をまたいだ移動の自粛も解禁された矢先だ。新型コロナとの「共存」を前提とする生活を指す「ウィズコロナ」「アフターコロナ」という言葉も頻繁に使われるようになっている。やはり長期戦である。
全国に緊急事態宣言が発令され、沖縄でも感染拡大が深刻化した4月ごろの状況と異なるのは、感染拡大が落ち着いた約2カ月の間に、ある程度の準備が整ったことだ。
県は感染拡大の状況を「発生早期」「流行警戒」「感染流行」「感染蔓延」の4段階に区分し、それぞれの段階に応じた施策の目安を示した。感染者が一気に140人を超えた当時は右往左往という印象だったが、これで県民も含めて一応の行動指針は示された。
宿泊施設での療養者を含む入院患者数が23人以下の現在は「第1段階」で、県外の感染地域から渡航した人には外出自粛を呼び掛け、離島への渡航に関しては、体調不良者には延期を呼び掛ける。
石垣市でも県立八重山病院でPCR検査機器を導入し、検査体制の拡充を進めている。感染者が確認されれば迅速に濃厚接触者を特定し、積極的な検査で感染の抑え込みを図る方針だ。
とはいえ、これから夏の観光シーズンが本格化する。感染が拡大している東京を含め、多くの観光客の来島が予想される。無症状の感染者も一定程度いると想定されることを考えると、県内で感染が再拡大する可能性もある程度覚悟せざるを得ない。
県医師会の宮里達也副会長は、特に重症化リスクが高いとされる高齢者の保護に留意するよう呼び掛けている。「若者はお年寄りにうつさない、お年寄りは若者からうつらない」ことを徹底し、若者が病院に高齢者を見舞うことを避けるなど、両者の接点を極力減らすことが重要だという。
新型コロナの感染もまた「新たな日常」と受け止めざるを得ないなら、ともかくも死者数を減らすことが至上命題になる。
何度も繰り返されていることだが、八重山の課題は医療体制の脆弱さだ。八重山病院の感染症病床は3床、結核病床と合わせても計9床しかなく、医療スタッフや機材も潤沢にはほど遠い。
4~5月ごろの感染拡大の際には、観光施設の営業自粛が相次ぎ「新型コロナで死ぬか、営業自粛で死ぬか」という悲痛な叫びが上がった。
ある程度の医療資源が確保されている大都市圏や沖縄本島なら「第2波」のような状況になっても、それなりの自信を持って営業継続に踏み切れるかも知れない。だが八重山で感染が拡大すれば、文字通り死への二者択一になりかねない。
「ウィズコロナ」という言葉はともかく「島で感染者は出さない。万一出ても絶対に広げない」という強い危機感を持つことが必要だ。「3密」回避、消毒徹底、マスク着用など、住民一人ひとりができる取り組みは、まだ始まったばかりだ。