尖閣諸島周辺で神をも畏れぬ蛮行がまかり通っている。尖閣は日本固有の領土だが、領土問題など「ない」と叫び、どれだけ史実を並べたとて、領土の要は実効支配である◆全知全能の神なら別だが、本来、無から有は生じない。「ない」ものは「ない」。ところが1960年代末、尖閣周辺で海底資源が見つかるとチャイナは突然、「ある」と騒ぎ出した。途端にゼロが1になった。1は2にも、それ以上にもなる◆チャイナは領土問題が「ある」としたい。今後は漁船拿捕(だほ)も視野に入れ、施政権を世界に見せつけてくるだろう。「ある」となれば、領土の折半や共同利用、占領されてさえ、米国を含めた国際世論は口さえ出さない。日本には墓標や灯台の整備、米軍射爆撃場活用など、実効支配を明確に示す手はあるが……◆刺激するな! 真相を見たくない人々が言いたがる。登野城尖閣への字名変更の時もそうだ。だが南シナ海を見ても分かる。最初は軍事的意図など「ない」と言い、時宜を見て「ある」と翻(ひるがえ)す。大陸史では難癖を付けて侵略し、ない口実を作って侵略す。刺激の有無は関係ない◆神の如く振る舞う全体主義国家は「ある」を「ない」とするのも常である。有無を言わせぬその真相を、正しく認識したい。(S)