石垣市の尖閣諸島周辺を航行する中国海警局船の連続航行日数が4日、過去最長の112日になった。尖閣諸島を実力行使で奪おうとする中国の意図は明白で、周辺海域の緊張は高まっている。一方、沖縄は新型コロナウイルス感染拡大の渦中。県政が米軍基地問題をより重視していることも相まって、尖閣問題に対する一般県民の関心はさらに薄まっている。県や県民から目立った発信はない。
「中国側の尖閣に対する姿勢が明らかに強硬になっている。政府は日本の有効支配を国内外に向けてしっかりと示す時期に来ている」
中山義隆市長は4日、取材に対し、中国船の長期連続航行を危ぐ。字名変更を表示する標柱を尖閣諸島に設置する意向を重ねて示し、政府の理解を求めた。
ただ加藤勝信官房長官は既に記者会見で「政府関係者以外の上陸は認めない」と言明している。
標柱設置に対し、県の後押しを得られる可能性も低そうだ。
玉城デニー知事の記者会見は、最近はほぼ新型コロナ対策と米軍基地問題が主要テーマ。コロナ禍以降、中国海警局船の長期連続航行、武器使用を認める海警法の施行、地元漁船への威嚇などといった問題が起きたが、知事から特段の発言はないままだ。
県内の大手メディアも、もっぱらコロナ禍と米軍基地問題に注力。海警局船の領海侵入などを除き、尖閣問題の報道は皆無に近い。尖閣海域に出漁する地元漁業者に対しても「活動家」と見る風潮が強く、漁業活動を取り上げる大手メディアはほとんどない。
石垣市は連日10人以上の感染者を出し、県内でも感染状況が最悪で「尖閣どころではない」雰囲気。市民の間では、尖閣に出漁する漁業者を支援するムードも醸成されていない。
元自衛隊陸将の用田和仁氏は、尖閣情勢について「中国は海軍、海警局、海上民兵という3種類の軍隊で攻勢をかけており、あとは(武力行使という)火を噴くだけだ」と指摘。「政府は無策で、経済界、メディアは中国に忖度(そんたく)している。このままでは尖閣を取られてしまうだろう」と憂慮した。