【視点】防衛白書 中国の脅威直視

政府の2021年度防衛白書は、中国への警戒感を前面に打ち出した内容になった。
中国は石垣市の尖閣諸島周辺で艦船の常時航行や領海侵入を繰り返している。出漁した地元漁船が中国艦船から接近や追尾といった威嚇行為を受けることも常態化している。
白書では中国艦船による尖閣周辺海域での領海侵入や、艦船に武器使用を認めた中国海警法施行などを挙げ「状況はますます深刻化している」「東シナ海や南シナ海などの海域において緊張を高めることになることは断じて受け入れられない」と強調した。
八重山住民は中国の脅威を肌で実感しており、白書の内容はリアルなものとして受け止められる。
中国の軍事力は世界有数の規模に成長した。
白書によると中国の2021年度国防予算は、公表額だけでも日本円で約20兆3301億円に上り、日本の約4倍に達した。陸上戦力は世界第3位の約97万人で、潜水艦などの海上戦力、第4・第5世代戦闘機などの航空戦力も規模で日本を圧倒している。
核戦力の拡大・近代化も進めており、核弾頭の数が今後10年間で少なくとも2倍の規模になると予測されている。
尖閣諸島周辺で中国が強気に出る背景には、日中の軍事力バランスが大きく中国優位に傾いている現実があるようだ。
このような中国に日本が単独で対抗するのは困難で、米国をはじめとする自由主義国家と連携しながら、中国の暴走を食い止めていくほかに手段はないことが分かる。
尖閣諸島周辺で頻繁に領海侵入を繰り返している中国海警局の艦船数は2020年の時点で131隻となり、海上保安庁の巡視船69隻を大きく凌駕している。
中国は南シナ海で他国の艦船や漁船を排除し、着々と実効支配を進めているが、尖閣周辺海域でも同じ行動に出る潜在力は十分にある。沖縄では中国の艦船派遣や領海侵入をパフォーマンスと受け止める声もあるが、中国の脅しには実力が伴っており、高をくくるわけにはいかない。
中国は、沖縄と一衣帯水の間柄である台湾への軍事的圧力も強化している。台湾有事が発生すれば沖縄、八重山が巻き込まれることは火を見るより明らかだ。白書が台湾情勢の安定を訴え「日本の安全保障や国際社会の安定にとって重要」と明記したのは当然である。
中国外務省の報道官は白書に対し「強烈な不満と断固とした反対」を表明した。国際社会の声に耳を傾けない独善的な中国の態度に、県民は大きな不安を感じている。
白書は米軍普天間飛行場の辺野古移設に関し「単純に移設するものではなく、基地機能や面積の縮小を伴い、負担軽減に十分資する」「住宅や学校で囲まれ、世界で最も危険と言われる普天間飛行場が固定化され、危険なまま置き去りにされることは絶対に避けなければならない」と指摘した。
辺野古移設の目的は県内への新基地建設ではない。中国の脅威に対応する力を維持しながら、危険な普天間飛行場を撤去しようとする事業である。沖縄を取り巻く厳しい国際環境を直視せず、辺野古の埋め立て反対のみに拘泥する現県政の姿勢は疑問だ。

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