【視点】対中 沖縄は原則論主張を

 岸田文雄首相は24日、来年2月の中国・北京冬季五輪に政府代表団を派遣しない意向を示した。中国の人権侵害に抗議し、米国などが進めている「外交ボイコット」に事実上同調した。
 しかし首相は、政府代表団派遣見送りが外交ボイコットに該当するか問われ「政府として特定の名称を用いることは考えていない」と言明。今回の措置に「外交ボイコット」という名称を使用しないことを強調した。
 松野博一官房長官は、米国も「外交ボイコット」という言葉を使用していないと説明した。だが首相らから強い対中非難は聞かれず、結果として、米国と中国双方への配慮がにじみ出る結果となった。
 中国は石垣市の行政区域である尖閣諸島周辺に艦船を常駐させ、地元漁業者の操業を妨害しており、沖縄にとって直接的な脅威となっている。中国がちらつかせる台湾有事の可能性は、地理的に近い沖縄にとっても他人事ではない。
 そうした立場から見ると、今回の「外交ボイコット」からは、むしろ政府の対中融和的な姿勢のほうが透けて見え、不満が残る。中国政府が岸田政権の決定に対し、強い批判を抑制したのも、その証左ではないか。
 首相は「基本的人権の尊重など普遍的価値は、中国においても保障されることが重要だ」と述べた。だが現在の日本外交を見ていると、中国に対し、今後も毅然とした姿勢を維持できるのか不安になってしまう。
 中国との経済的な結びつきが強まる中、経済界の強い要望もあり、外交的断絶を招きかねない強硬な言動を避ける慎重さは理解できる。だが尖閣を抱え、台湾に近い沖縄の立場としては、あくまで原則論を主張すべきだ。
 県内では尖閣有事や台湾有事への不安から、政府に穏健な対中政策を求める声が根強いのも確かだ。しかし尖閣周辺海域で、中国船が傍若無人に領海を踏み荒らしている現状を、どれだけの県民が理解しているか。今年の年の瀬も、海上保安庁は尖閣周辺の中国船に昼夜兼行で対応しなくてはならない。
 玉城デニー知事は常々「外交による平和的な解決を求める」と発言する。しかし一方的に日本の領海を侵食し続ける中国側に、そもそも対話に応じる意思はあるのか。日本として外交努力を継続するのは当然だが、知事は何か勘違いしていないか。沖縄として、もっと強いメッセージを発する必要がある。
 中国との紛争を起こさないようにするには、まず中国の領土的野心に歯止めを掛けることが必要だ。石垣島で建設が進む陸上自衛隊駐屯地は、来年春に開設予定となっている。
 来年2月の石垣市長選では、陸自配備の是非は大きな争点にならないものの、住民投票実施の是非が話題になりそうだ。
 どのような建築物にしても地域住民の声に配慮すべきなのは当然だが、安全保障なくして地域の平和や発展はない。陸自配備は着実に進めるべきだ。

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