翁長雄志前知事が那覇市長時代に残した平成の負の遺産と言っていいだろう。那覇市が儒教の祖・孔子をまつる「孔子廟」を設置するため、市有地の公園を管理団体の久米崇聖会に無償貸与していることが地裁、高裁で違憲と判断された◆憲法では、公権力が特定の宗教を優遇することを禁じる「政教分離」の規定がある。孔子廟について市は「沖縄独特の歴史や文化を継承するための施設で、宗教性はない」と主張していたが、裁判所は退けた◆一般県民としては、孔子への信仰が沖縄の歴史や文化と密着していると言われてもピンと来ないが、市は上告を決めた。今後は最高裁の判断が待たれる◆翁長市政時代の負の遺産はもう一つある。クルーズ船で来県する中国人観光客を歓迎するため、那覇港近くの若狭緑地に建立された「龍柱」だ。一括交付金などを財源に約3億円を投じたが、巨大な姿は周囲の景観に溶け込まず「異様だ」との声も上がる。保守派から「中国への服従のあかし」との批判も出る始末◆孔子廟も龍柱も、問題は行政の「過剰サービス」だ。政治家としては身を切るような厳しい判断をするより、誰かの歓心を得るほうがはるかに楽だ。辺野古の問題も含め、翁長氏もまた「嫌われる勇気」を持てない政治家だったのではないか。